イノベーションに必要な6つの職種

 では具体的に、企業の変革に求められるのはどのような人材なのか。ここでBCG Digital Ventures(以下、BCGDV)を構成する6つの職種を紹介したい。BCGDVは「大企業と新たなビジネスを立ち上げ、イノベーションを起こす」ことをミッションに、6つの職種が1チームとなって変革を推進する。いずれも大企業の変革にとって不可欠な人材である。あなたの企業には、これら6職種にあたる人材が十分にいるだろうか?また、あなた自身はどの職種に該当するだろうか。ぜひ考えながら読み進めてほしい。

 まず、伝統的な大企業にも定着していることが多い3職種について説明する。

 ベンチャーアーキテクト(VA)は、企画をビジネスに昇華させるために、事業計画から事業開発、プロジェクトマネジメント、資金調達まで幅広く担当する、いわゆるビジネス側の人材である。大企業にとっては比較的なじみがあり、それなりに層も厚いはずだ。「自分はVAに該当する」と考える読者も多いだろう。

 ストラテジックデザイナー(SD)は、デザイン思考などの手法を通じて、顧客の潜在的なニーズをあぶりだし、新たなビジネスの種を生み出す役割だ。顧客の声を聴き、顧客起点で考えるという文脈においては、(デザイン思考を体系的に学んだかどうかはともかく)大企業にも一定の組織能力があるといえる。

 グロースアーキテクト(GA)は、サービスやプロダクトの成長戦略を描き、デジタルマーケティングなどの手法を駆使して成長を実現する職種だ。新規顧客の獲得や、既存顧客の保持、あるいは獲得単価を下げるための施策を立案し、高速でPDCAサイクルを回す。大企業には今はこのような人材が少ないかもしれないが、何かしらのデジタルサービスを展開している企業であれば、似た機能を持つ部門やチームがあることだろう。あるいは、広告代理店との二人三脚で進めている企業も多い。