――コロナでピンチにある業界、企業は何をすべきでしょうか。

奥野 例えば我々が投資している本当にいい会社っていうのは、こういう状況下でも元気に頑張るんですよ。むしろ「勇躍する」って言ったほうがいいですね。競合相手が落ち込んでいる時だからこそ、シェアを取りに行くとか、それが企業の戦いの本質ですよね。本来的には「生き残り合戦」なので、こういう状況の時に勇躍しないような会社は、そもそも資本市場にいる資格がないんです。

今がチャンスなんですよ。企業同士の闘いにおいて、相手が落ち込んでいるときこそ、攻めどきなのですから。だからピンチの状態にある業界や企業は、どのように違いを見せるのかっていうことが大事ですよね。航空産業でもホテル業界でも同じだと思うんですよ。みんなが落ちているからそれでいいや、というような話じゃなくて、どのようにすればこれから生き残ることができるのか、それは自分の頭で考えるしかないのです。それを国に助けてもらおうとか、銀行に助けてもらうことを解決策として考えているだけだとすると、その時点で終わりですね。

「短期的な業績」と「その企業の有する競争力」というのは全く別物です。今回のコロナでも、震災のときでもそうですし、円高局面のときでもそうですけど、短期的なショックが短期的な業績にヒットするのは避けようがないです。だからといって競争力がなくなるかというと、そういう話にはならない。競争力というのは相対的なものだから。将来の競争力をつけるべく、このようなコロナ禍でも従業員を解雇しないで、逆にセールスを増強しておくと、正常に戻ったときに浮上できるわけです。こういった不況こそが他社との違いを見せる最大のチャンスなんです。不況のときはみんな人を解雇したり、研究開発費を削るんです。でもこういうときにこそ、やるべきことをしっかりやっておけば、浮上したときに全然違う世界になる。ピンチにあるときこそ、自分の競争優位が何かというのをしっかり見極めて、そこに対して投資をするということなんですね。こういうときにこそ差が出てくるわけです。

――この状況下で御社が運用する投資信託「おおぶね」の運用実績はいかがだったのでしょうか。

奥野 僕らが投資しているのは、社会にとって必要不可欠な財とサービスを提供している企業であり、他社がその事業領域への参入をあきらめるほどの強い参入障壁を築いています。さらに、「人口動態」や「高齢化」などの自明かつ不可逆的に起こる社会構造の変化を追い風にできる、すなわち長期潮流に乗っている企業です。「付加価値の高い産業」、「圧倒的な競争優位」、「長期潮流」の三つが重なったところの構造的に強靭な企業®に投資をしているので、そもそも株価もそれほど下落しませんでした。今となっては普通に戻って高値を更新している会社も結構多いです。よって、全体的には非常にいいパフォーマンスになっています。