「教養としての投資」を上梓した農林中金バリューインベストメンツ常務取締役CIOの奥野一成氏による対談シリーズ第3弾は、同じく長期投資家で、グローバル運用を行っているレオス・キャピタル・ワークス代表取締役会長兼社長CIOの藤野英人氏です。
過日、藤野氏も「投資家みたいに生きろ」を上梓したばかり。話はお互いの著書に対する感想から始まり、海外マーケットを舞台にして運用を行っている者同士の、投資に対するこだわりに展開しました。(構成/鈴木雅光)
日本人はもっと経済の知識を身に付けよ
奥野 藤野さんが書かれた「投資家みたいに生きろ」を拝読させていただきました。
藤野 ありがとうございます。私も奥野さんの「教養としての投資」を読ませていただきました。
奥野 ありがとうございます。私の方が後に本を書いたのですが、何だか私が藤野さんの本をパクったかのように(笑)、考え方が同じでした。正直なところ我が意を得たりという気持ちになりました。私は今回書いた本を通じて、個々人がもっと主体性を持って働くことの重要性を主張させていただきました。そのための方法のひとつとして投資があり、投資をすることによって単に働かされているだけの「労働者1.0」から脱却して、自ら主体的に働く「労働者2.0」になるべきだということを、本を通じて言いたかったのです。
藤野 奥野さんが書かれた本のタイトル、「教養としての投資」はまさにその通りで、本来、投資は一般教養であるべきだと思うのです。少なくとも義務教育で投資を教えているケースというのは、全くといってよいほどありません。そもそも日本人は経済についても勉強する機会がほとんど無くて、だから知らないことによって大きな失敗をしたり、恥をかいたりすることがあると思うのです。以前、ある調査で、東京証券取引所が野村証券と米国の大学とで、日本と米国をはじめ世界各国の経済知識に関するアンケートを実施しました。それによると、米国では、金融リテラシーを高めるために、中学や高校でファイナンス教育を取り入れる動きが進んでいて、中学生、高校生、大学生、社会人で経済のテストをすると、年齢が上がるにつれて点数が上がっていくそうです。では、私たちの日本はどうかというと、中学生も社会人も経済の知識はほとんど変わりません。政治経済という科目が高校生であると思いますが、ウエイトが置かれているのは政治ですよね。理系で学んでいる人は経済を勉強する機会がほとんどありませんし、文系で一流大学に入るには歴史の勉強が中心で、ちょっと変わった人が地理を学ぶという程度です。経済ってそういう位置づけなんですよね。それだけに、「教養としての投資」というタイトルの重みを感じました。
1966年富山県生まれ。投資家、ファンドマネージャー。レオス・キャピタルワークス株式会社代表取締役会長兼社長・最高投資責任者(CIO)。早稲田大学法学部卒。国内・外資大手投資運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年レオス・キャピタルワークス株式会社を創業。主に日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。一般社団法人投資信託協会理事。投資教育にも注力しており、JPXアカデミー・フェロー、明治大学商学部兼任講師も務める。主な著書に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『ゲコノミクス』(日本経済新聞出版)などがある。