2月、3月にかけて大きく下落した株価は、4月、5月を経て徐々に戻し、6月はやや頭打ちという展開が続いています。
マーケットは恐らく、アフターコロナの世界で生き残れる企業の選別を始めているようです。
どういう企業が、どういう業種が生き残れるのか。『ビジネスエリートになるための 教養としての投資』(ダイヤモンド社)をダイヤモンド社より刊行した農林中金バリューインベストメンツ株式会社常務取締役CIOの奥野一成氏と、グロースキャピタルを運営するシニフィアン株式会社共同代表の朝倉祐介氏が、アフターコロナの投資について語ります。(撮影/高須力 構成/鈴木雅光)

飲食・インバウンド関連はサバイバル。
リモートワーク関連は堅調

奥野 朝倉さんが共同代表を務めていらっしゃるシニフィアン株式会社は未上場スタートアップ、新興上場企業に対する経営支援や資金調達のお手伝いをしているグロースキャピタルですが、今回は新型コロナウイルスのパンデミックによって、どういう会社、どういう経営者が生き残っていくのかという点を中心にお話を伺ってまいります。

朝倉 会社によってまちまちですね。飲食やインバウンドに関連する会社は非常に厳しく、生き残りをかけたサバイバルモードですし、一方でリモートワークに関連する会社は非常に堅調です。ただコロナの影響を受けて一気にニーズが高まるスタートアップでも、想定よりも速いペースで一気にお客様が集まり、売上が伸びると同時に、将来対処する想定だった課題が早期に出現するといったケースも散見されます。うれしい悲鳴ではありますが。

奥野 私たち農林中金バリューインベストメンツ株式会社(以下、NVIC)は今回のパンデミックを受けてリモートワークに切り替えましたが、実はそれ以前からリモートワークの体制を整えていました。というのも、常日頃から生産性を高めるためにはどうすれば良いのかを考えていて、出来るだけ準備を進めておこうと取り組んでいた最中にパンデミックが生じたので、たまたまですが、上手く対応できたのです。ベンチャー企業は常につま先立ちで、どこにも余裕がありません。私たちNVICもベンチャー企業なので、組織体制については崖っぷちに立たされていない時でも、常に崖っぷち感を持ってあらゆる準備を進めておくことが大事だと認識した次第です。

朝倉 この数年、スタートアップには追い風が吹いていて、バブルとまで言われていました。私自身はリーマンショックの直後にスタートアップの経営に携わったことがあったので、ここ数年のスタートアップに吹いていた追い風については若干、自分の感覚からずれている印象を受けていたのは事実です。でも、結局のところ追い風でも向かい風でも、やるべきことは変わりません。良いプロダクトをしっかり作り込み、無駄なコストを切り詰めて、キャッシュを確保しながら、ここぞという点に投資するといったことを愚直に続けるだけです。ただ力点は変わります。外部環境が好調ならガンガン資金調達して思い切りアクセルを踏めば良いし、逆に不調なら、干上がって満足に資金調達できない状況を考えて、慎重に事を進める必要があります。

奥野 この数年、スタートアップに吹いていた追い風は今、どのような状況になっているのですか。

朝倉 2020年以降は向かい風ですね。そのため、今までの追い風モードからの切り替えに苦労しているスタートアップも少なくありません。たとえばベンチャーキャピタルから資金調達を企図するスタートアップが、「事業計画によると2、3年後の業績はこうで、ベンチマークにしている上場会社のマルチプルがこうだから、私たちのバリュエーションはこうなります」といったロジックで説明をすることはよくありますが、今回のように新型コロナウイルスの問題で経済活動が停滞してしまうと、ほんの数ヵ月前に策定した事業計画が全く進捗しなくなります。そうなると事業計画そのものを見直さなければなりませんし、ベンチマークとなっている上場会社のマルチプルも大幅に下がっていますから、スタートアップ側がもともと説明したロジックでバリュエーションを計算すると、以前の半分くらいまで落ち込んでしまい、予定していた資金調達が困難になるといったことも起こります。向かい風に変わったことで、どうやって資金を確保すれば良いのかという点では、思考の転換が必要です。

朝倉祐介(あさくら・ゆうすけ)
シニフィアン株式会社共同代表
マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、東京大学在学中に設立したネイキッドテクノロジーに復帰、代表に就任。ミクシィへの売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績の回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員等を経て、政策研究大学院大学客員研究員。ラクスル株式会社社外取締役。株式会社セプテーニ・ホールディングス社外取締役。2017年、シニフィアン株式会社を設立、現任。著書に、『論語と算盤と私』『ファイナンス思考』(ダイヤモンド社)など。