自社のICT改革をコンサルティング事業へ 「かっこいい鉄工所」をプロデュース

まるでおしゃれなカフェのよう。静岡県沼津市のロードサイドで目を引くスタイリッシュな建物は、この地で70年以上の歴史を刻む影山鉄工所の本社社屋だ。溶接を核とした高い鉄加工技術を武器に、マンションや商業施設など幅広い建築物の鉄骨製作と組み立てを手がけ、実績を全国に広げている同社は、慢性的な人材不足が続く鉄工業界にあって、若い職人がいきいきと活躍する「元気な鉄工所」としても注目の存在だ。(取材・文/小林直美)

 若きリーダー・影山彰久氏は、創業者の祖父、2代目の父からバトンを受けた3代目。2007年に入社し、経営に本格的に参画したこの数年間で、売り上げ規模を10倍以上に急成長させている。

ICTとアウトソーシングで
受注キャパシティーを拡大

 経営改革は、ピンチから始まった。

「入社後数年は、職人としてひたすら溶接や組み立ての技を磨いていたのですが、脂が乗ってきた頃、リーマンショックからの建築不況で受注がなくなっちゃったんですよ。背水の陣で飛び込み営業の日々が始まりました」

自社のICT改革をコンサルティング事業へ 「かっこいい鉄工所」をプロデュース代表取締役・影山彰久氏

 とはいえ、新規クライアントの開拓は簡単ではない。地域の不動産情報などをまとめたレポートを携えてゼネコンを訪問するという地道な活動で信用を構築。ようやく新規受注が舞い込み始めて喜んでいたところへ、既存顧客からの受注が復活し、生産のキャパシティーを超える注文が殺到するように。倒産の危機から一転、その対応に追われることになる。しかし、注文に合わせて設備投資を行えばバブル期の二の舞になりかねない。

 そこで影山氏は、増えた仕事を協力企業にアウトソーシングするべく、マネジメント機能を強化する戦略に出る。案件管理ができる事務系スタッフの増員と、ICTの積極的な導入で品質管理と業務効率化を徹底。以来、内製と外注の黄金比を6対4とし、設備投資を最小限に抑えつつ、右肩上がりで業績を拡大し続けている。