自社の成果を引っ提げて
ICTコンサル事業スタート

 こうした改革のプロセスから生まれた新規事業が、影山氏イチ押しの「鉄工所のためのICTコンサルティング」だ。

「大きい現場になると納入する鉄骨の数も万単位に及び、工程も何段階にもわたります。これらを昔ながらの経験と勘だけで管理していては生産性が上がりません。そこで社内にICT事業部を立ち上げ、鉄工所に最適化した独自のシステムを構築・導入したのです」

 併せて、紙で管理していた「日報」もスマホアプリ化。職人の日々の動きをスマートに管理できるだけでなく、案件ごとの経費も簡単に可視化が可能となった。生産性が向上し、情報共有が進んだことで残業や休日出勤も激減。「働き方改革」が進み、若い職人の定着率が上がった。

自社のICT改革をコンサルティング事業へ 「かっこいい鉄工所」をプロデュース(左)オリジナル日報アプリ「NipiiTorch(ニッピートーチ)」は、1アカウント当たり月額980 円~。生産システムや各種デジタルツール導入のサポートも可能。(右)溶接体験施設は、地域の子どもたちにも人気だ
●株式会社影山鉄工所 事業内容/鉄骨工事請負施工、各種板金溶接、生産現場のICT導入ほか、従業員数/56人、売上高/19億9200万円(2019年度)、所在地/静岡県沼津市西間門28-3、電話/055-923-3000、URL/https://kageyama-co.jp/

 そこでこれらを基に、同業他社へのコンサルティング事業を開始。いずれも月額課金式で初期投資は不要。鉄工所の業務に特化した使い勝手のよさと、会社の事情に応じてカスタマイズできる柔軟性が強みだ。ユニークなのは、日報アプリにコミュニケーション機能をプラスしたこと。

「職人の世界って、どうしても『黙って技を盗め』みたいな文化が根強くて、言葉が足りません。そこで、感謝の気持ちをワンクリックで送れる機能を実装したのです。年齢や部署の壁を越えて交流が活性化し、社内の風通しがよくなりました」

 この先に影山氏が見据えるのは「鉄工業界全体の魅力アップ」だ。業界にいまだ根強い3Kイメージを払拭し、若者が憧れる就職先にしたい。20年に竣工した新社屋に溶接体験施設「アイアンプラネット」を併設し、溶接の楽しさを発信しているのも、そんな思いの表れだ。鉄工業界の革命児の挑戦に、これからも目が離せない。

(「しんきん経営情報」2021年1月号掲載、協力/沼津信用金庫