M&Aの選択肢には
地方の壁も

――2月時点で現預金が2500万円くらい。仮に前年比7~8割くらいまで売り上げが戻ったとしても、事業を継続するのは難しいという結論に至ったと。

 そうですね。仮に売り上げが7~8割まで戻ったとしても、毎月赤字を出してしまうという状況だったので。

――通販やテークアウトも好評だったようですが、それらが売り上げの柱を担うことは想像できなかったですか。

 想像はできないですね。通販で商品が売れたのは、そのときに巣ごもり需要がピークになっていたことも背景にありました。特にうちの店で販売していたパンケーキミックスについては、「小麦がスーパーから消えた」という話も出ていた中だったので、なおさらよく売れたのかなと。加えて、当時は「コロナで困っている人を助けよう」みたいな雰囲気もありました。

 ただ、これが永続するとは思えず、通販が柱になることはあり得ないと思っていました。テークアウトも同じです。

――事業譲渡は検討しましたか。

 銀行などに相談し、検討しました。ただ、コロナ禍ということに加えて、事業譲渡は時間もかかるので、そこまで資金が持つかどうかが危うい状況だと考えて断念しました。

 そもそも青森県内だと、M&Aの実績自体がまず少ない。あるといえばあるんですが、個人間で仲の良い社長同士が「その店買うよ」とか、そういうレベルなんです。私が経営していたのは5店舗なので、そこを引き受けられる県内の事業者がそもそも少ないのです。他県に目を向けたとしても、たまたま青森に進出しようと思っていて業態が合っている企業じゃないと買ってもらえないので、そうした場所的なハンディはやはりあったかなと感じています。