東芝の不正会計を見抜けなかった新日本監査法人が、金融庁の行政処分を受けて5年が過ぎた。この間、海外提携先の名を冠してEY新日本に衣替えし、グローバルとの連携強化を進めてきた。旧新日本の何が変わったのか。特集『激動!会計士』(全12回)の#10で、EYジャパントップの辻幸一チェアマン&CEO(最高経営責任者)が事件後5年の歩みについて初めて語る。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)
アジア太平洋エリアで組織再編
EYジャパンがグローバル連携にまい進する理由
――EYジャパンは2019年7月、EYアジアパシフィック(アジア太平洋)と統合しました。この狙いは何でしょうか。
われわれは、各国のリーガルエンティティ(法的組織体)をその国のパートナーが所有するという組織形態です。EYジャパンとEYアジアパシフィックに資本関係はなく、統合というほどの強い組織再編ではありません。
それまで日本は、世界に四つあるエリアの一つでした。しかし日本以外のAmericas(北・中・南米)、EMEIA(欧州、中東、インド、アフリカ)、アジアパシフィックの3エリアに比べて非常に小さく、存在感が出しづらかった。
そこで逆にアジアパシフィックの中に入り、その中では日本は大きいですから、そこで日本の意見をグローバル全体に通しやすくしようというもくろみがありました。日本の存在感がグローバルの中で大きくなれば、われわれのクライアントの要望にも応えやすくなる。統合というよりも、レイヤーの枠組みを変えたというイメージでしょうか。
――それは日本がアジアパシフィックの傘下に入り、吸収合併されたということですか。