日本の四大会計事務所は、企業の内部情報を扱う監査法人と、コンサルやM&A助言会社といった複数の顔を併せ持つ。提携する海外の「ビッグ4」と共に業態や収益の拡大を続けるが、金融庁や政界関係者は今、肥大化するビッグ4の動向にある問題意識を抱き始めている。特集『激動!会計士』(全12回)の#5では、そんな四大の内実に迫った。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)
グローバル競争にさらされる四大
利益至上主義の行き着く“末路”とは
「グローバルからノルマを押し付けられ、それによりあなたの評価や報酬が決まっているのではないですか」――。
四大監査法人のあるパートナーは最近、金融庁の検査官からそんなことを尋ねられたという。「グローバル」とは、日本の四大がそれぞれ提携する国際会計ネットワーク(ビッグ4)を指す。金融庁の「強い関心」(前出のパートナー)は一体何に向けられているのか。
それを理解するには、国際ビッグ4と日本の監査法人の特殊な関係性を、まずは押さえなければならない。
日本の監査法人は、企業の内部情報を監査する職性上、公認会計士法で厳格な独立性が定められている。トーマツ、あずさ、EY新日本、PwCあらたの四大監査法人の出資者は、パートナーである日本の会計士らであり、国際ビッグ4と資本関係はない。そのため冒頭のパートナーも「われわれは外資ではない。純然たる日本の法人であり、海外からノルマを課されるはずもない」と首を振る。
いずれの監査法人も国際ビッグ4と提携する日本のグループ(会計事務所)の一組織という位置付けだ。デロイトトーマツ、KPMGジャパン、EYジャパン、PwCジャパンの各グループには、監査法人だけでなく、税理士法人やコンサルティング会社、M&Aアドバイザリー会社などもある。
グループ内で人事異動も行われ、全体を統括する代表には監査法人出身の会計士が就く。彼らはグローバルの会議に出席して意見を述べる、いわば日本の権益代弁者だ。デロイトトーマツの永田高士グループCEO(最高経営責任者)は「週に1~2回はグローバルの経営メンバーとして会議に加わり、グローバル全体の経営戦略について議論している」と述べる。
こうした組織形態について、デロイトトーマツの別の幹部は国連組織に例える。「世界各国に日本を含むメンバーファームが存在し、それぞれがデロイトグループのメンバーシップアグリーメントを結び、一定の規約の下に活動している。国連もデロイトも米ニューヨークに本部があるが、米国の組織ではない」(同幹部)というわけだ。
ただし国連には常任理事国や非常任理事国といった序列が存在する。同じ国連加盟国であっても、経済や軍事といった国力の差によって発言力に違いがある。それと同様、ビッグ4の内部でも序列が存在するのではないか――。
それを懸念する声は、永田町からも上がっている。