支援の対象は、トヨタ自動車とパナソニックの合弁で設立された車載電池メーカー「プライム プラネット エナジー&ソリューションズ」や、リチウムイオン電池の主要4部材(正極材・負極材、電解液、セパレータ)などを製造する電池材料サプライチェーンに組み込まれている企業群となる見込みだ。

 世界的な脱炭素の潮流に歩を合わせるように、米中欧では脱ガソリン車の動きが急加速している。中でも電気自動車(EV)市場は、既存の自動車メーカーのみならず、米アップル、中国のファーウェイや百度(バイドゥ)、あまたのベンチャー企業がこぞって参入する乱戦模様となっている。

 日本政府も30年半ばまでに新車販売の「ガソリン車ゼロ」を掲げたことで、自動車メーカーやそのサプライヤーもEV販売計画を前倒しさせる動きが目立っている。

 このタイミングで、EVの基幹デバイスである車載電池がコケたならば、日本のお家芸である自動車産業が崩壊しかねない――。危機感をあらわにした経産省は、出遅れた車載電池の投資支援に踏み切ることを決めたのだ。

日本勢に待ち受けるいばらの道
モビリティの価値の決め手はソフトウエアへ

 それでも、日本が車載電池で覇権を握るにはいばらの道が待ち受けているだろう。

 テスラ向けの円筒型電池と旧三洋電機の流れをくむ角形電池を持つパナソニックの車載電池は、かつては質量共に世界一の座にあったが、中国CATL(寧徳時代新能源科技)の後塵を拝している。18年時点の統計では、首位CATLと2位パナソニックとのシェアは僅差だったが、いまやCATLはトヨタやホンダに加えて、独フォルクスワーゲンなど欧州自動車メーカーの大量受注を獲得しており、「受注量」ではパナソニックを大きく引き離している。韓国LG化学も価格攻勢を仕掛けて米ゼネラルモーターズ(GM)などと連携を深めている。

 懸念はそれだけではない。EVの原価に占める構成比が高いという意味では車載電池は基幹デバイスだが、モビリティの競争力の「決め手」は、明らかにハードウエアからソフトウエアへシフトしている。車載電池を含めた車体の製造・販売ではなく、モビリティサービスやエネルギーマネジメントなど新しいビジネスモデルを構築した企業が勝ち組になるとみられているのだ。

 遅れに遅れたタイミングで、車載向けリチウムイオン電池に巨額の血税を投入する判断は正しいのか。

 ある経産省幹部は「遅れたという批判があるのはその通りだが、兆円規模の大規模投資なくして電池では勝てない。トヨタなどが取り組む全固体電池という“次のステージ”で日本が勝つブリッジとしても、今回の投資は必然だと考えている」と言う。別の経産省幹部も車載電池への巨額投資を認めた上で、「遅くとも今年上半期までに金額やスキームなどの詳細を詰める」としている。

 今回の巨額投資の成否については、特集『脱炭素 3000兆円の衝撃』の#1『トヨタ・パナ電池合弁に血税補助金1兆円!日本はEVで「半導体の二の舞い」を避けられるか【スクープ完全版】』で詳しく解説している。

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