「母数」を増やせば、
それに比例して「結果」は出る

 僕が、この「真実」にはじめて触れたのは中学時代のことです。

 卑近な話で恐縮ですが、同級生の友達とナンパにチャレンジしたときのことです。

 男子校に通っていたため、日常的に会話する女性といえば、母親か保健室の先生くらい。「このままではアカンやろ?」というわけで、大阪の繁華街に繰り出して、路上で女の子をナンパすることにしたのです。アホみたいですけど、本人たちは大真面目でした。

 目標は、当時みんなが使っていたポケベルの番号を、一人でも多くの女の子から教えてもらうこと。だけど、もちろん苦しい戦いを強いられました。

 勇気を出して、道行く女の子に声をかけても、ほとんどは見向きもしてくれません。なんとか受け答えをしてくれる女の子がいても、なかなかポケベルの番号までは教えてくれない。ようやく一つ目の番号を教えてもらうまでに、10人くらいの女の子に断られなければなりませんでした。

 これでは、効率が悪すぎる。

 それに、こんなに拒絶されまくっていると、さすがに心が折れそうになります。

 そこで、友達と作戦を練りました。「立ち止まってくれる女の子に共通点はないか?」「どう声をかけたら立ち止まってくれる?」「どんな風に話をもっていったら、番号を教えてくれる?」など、意見交換をしながら「ナンパ作戦」を立てたのです。

 ところが、それで再チャレンジしても、状況はほとんど変わりませんでした。次から次に断られるだけ。そこで、再び集まって作戦会議……。そんなことを何度か繰り返しましたが、結局、たいした変化は起こりませんでした。

 そして、僕たちはようやく気づきました。

 作戦会議をやっている時間が無駄だ、と。そんなことをやっても、急にナンパが上達するわけじゃない。実際、番号はたいして増えてないやん? それよりも、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」ではありませんが、ひとりでも多くの女の子に声をかけたほうがいいと考えたのです。

 これが大正解でした。当初、10人に声をかけて1人から番号を教えてもらいましたが、20人に声をかけたら2人、30人に声をかけたら3人と、声をかける「母数」にほぼ比例して、番号を教えてくれる女の子は増えていったのです。つまり、ナンパは「確率論」だということです。