ワクチンと異なり、なかなか明るいニュースが聞こえてこない新型コロナウイルス感染症の治療薬。コロナ感染症が風邪やインフルエンザと同等扱いになるには、やはり特効薬の開発が必須だ。一時話題となったアビガンは、富士フイルムが開発元だったこともあり期待が高かったが、いまだ特効薬といえるような有効性を示すデータがそろっていない。特集『免疫力の嘘』(全13回)の#7では、現在の開発状況、医療現場において使用されている薬剤、今後の見通しについて解説する。(ステラ・メディックス社長/編集者/獣医師 星 良孝)
実は普通の風邪にも特効薬はないが
コロナはひとたび重症化するとたちが悪い
「子どもが発熱し、かかりつけ医から抗生物質の処方を提案された」
これは最近、知人から聞いた言葉である。コロナ禍による受診控えで、クリニック(診療所)の経営も大変だと予想されるが、「日本の発熱や風邪に対する医療は根拠のない薬の処方が当たり前だったな」ということを、冒頭の知人の言葉を聞いて思い出した。
抗生物質は細菌を殺す薬剤。細菌とウイルスは違う。ウイルス感染によって起こる、いわゆる普通の風邪には効果がない。風邪に特効薬はなく、症状を軽くする解熱薬などあるが、基本的には休養するしか方法はないのである。
新型コロナウイルス(以下コロナ)もウイルスなので、抗生物質はもちろん効かない。そして、現状コロナ感染症の特効薬はない。
しかし、風邪とコロナ感染症には大きな違いがある。ひとたび発症すれば、コロナ肺炎は普通の風邪よりもたちが悪く、一日も早く特効薬が待たれるところだ。コロナ感染症が普通の風邪並みになる日は来るのか。
それは、薬の有効性に懸かっている。報道ではさまざまな薬の名前が飛び交っているが、例えば、米国のドナルド・トランプ前大統領がかつて評価していたハイドロキシクロロキンの効果は「×」だ。
どの薬が効いて、どの薬が効かないのか。これから登場する薬も含めて、具体的な薬の名前を出して検証していきたい。