免疫力の嘘#8Photo by Seiko Nomura

ヨーグルトや乳酸菌は、腸内環境を整える、免疫力を上げるというイメージが一般に定着している。前年比で2020年上半期のヨーグルト・乳酸菌商品の売り上げが伸び、特に2~6月の増加が著しく、コロナ予防への期待が消費を喚起したとみられている。特集『免疫力の嘘』(全13回)の#8では、ここ数年メーカーが繰り広げてきた、エビデンスを利用した巧みな科学マーケティングを分析する。(科学ジャーナリスト 松永和紀)

緊急事態宣言中は前年比売り上げ10%増
コロナで神風が吹いたヨーグルト&乳酸菌

 昨年来、“新型コロナウイルス感染症を防ぐ食べ物”“免疫力を上げる食品”などのフレーズが、メディアに氾濫している。その筆頭がヨーグルトや乳酸菌関連商品だ。パンデミック初期の昨年2月から売り上げが伸び始め、緊急事態宣言真っただ中の4月には、ヨーグルト・乳酸菌関連商品は前年比売り上げが1割増となった(インテージ調べ)。

 もともと毎年冬になると、「ヨーグルトで風邪やインフルエンザを迎え撃つ」という類いの話題がメディアで取り上げられている。「インフルエンザウイルスを予防するなら、新型コロナウイルスにも効くのでは?免疫力が上がるのでは?」と期待が高まるのも無理はない。

 コロナ禍の今、売り上げを伸ばしたい企業、研究費が欲しい大学、読者・視聴者を増やしたいメディアなどの思惑が絡まり合い、ヨーグルトだけでなくさまざまな食品が“効く”と喧伝される。

 だが、彼らが“エビデンス”と称する代物には注意が必要だ。

 食品業界がしのぎを削る「科学マーケティング」とは何か?そのカラクリについて詳細に見てみよう。