鈴木氏はこの問いに「さまざまな理由があると思うが、そもそもリモートワークができる段階にないというケースもあるだろう。まず、いろいろな業務が電子化できていない場合などは、取り入れるのは難しいと思う」と答える。

「デジタルトランスフォーメーション(DX)がトレンドとなっているが、その本質は、データ駆動型、データ起点の会社と事業を作ることだと私は解釈している。そのためには、意思決定や情報の流通など、あらゆるものをまずデジタル化しなければならない。その上で、データを扱う習慣を付け、読み解き、解釈し、応用していくということだろう」(鈴木氏)

 これを実現するには「企業・組織のカルチャーも求められるし、個人レベルでの成長も求められる」と鈴木氏は続ける。

「先ほど説明したような『1カ月間、ドキュメントを書く』というように、何よりトップやリーダーが、どこまでデータ駆動型のカルチャーや企業を理解し、実行するかにかかっているのではないか。理解が深まればおのずと『これは会社にとって推進した方がいいことだ』と考えるようになるはず。その後は、推進していく過程でメンバー個々の成長を促し、そのカルチャーと結び付けていくということをやらなければいけないのだと思う」(鈴木氏)

 鈴木氏が提唱する「リモート組織2.0」において、カギとなるのは「オフライン以上の事業成長と、強固なカルチャー」だ。

「経営の役割は、メンバー個々の成長と会社の成長のベクトルを極限まで合わせることだ。従業員が会社に属する理由は今、どんどん薄れてきている。副業の拡大もそうだし、フリーランスに転じる人や起業する人もいて、10年後にはもっと『企業へ帰属したい』という意識は下がっているだろう」(鈴木氏)

 それでも人が属したくなる会社にしていくには、何が必要なのか。鈴木氏は「タレント性のある人たちが所属しているだけではダメ」と語る。

「その会社にメンバーの成長を促すような高い能力を持つ人がいることに加え、そういう人のノウハウや考え方が流通しやすい仕組み・システムがあること、有用な一次情報がシェアされやすい環境にあること。この三つが、コミュニティーとしての会社に属するメリットをメンバーが感じるための要素となる」(鈴木氏)

 さらに「オンラインではこの三つの要素を成立させやすく、オフラインを超えたカルチャーの醸成が見込める」という鈴木氏。今後は、事業を最短距離で成長させるために、最初からオフィスを設けないオンライン組織の方がメリットは大きいと考えて、事業を立ち上げる経営者が増えていくのかもしれない。