テレワークの急激な浸透に伴い、オフィスの解約や縮小移転を考える企業が増えている。しかし、本当にオフィスをなくして会社は機能するのか。バーナードの名著『経営者の役割』を読み解くと、「5つの条件」を満たす会社であれば、オフィスがなくとも十分に機能することがわかる。

バーナード『経営者の役割』から
オフィスを持たない組織を考える

 コロナの影響という「外圧」によって、テレワークを強制的に経験せざるを得なくなった日本企業は、少なくとも、短期的には、社員全員が出社しなくても、最低限、“会社はまわる”ことに気づいてしまった。

 ニューノーマルの一つの形態として、「オフィスを持たない組織」が想定されるのは自然な成り行きであろう。では、それは「その場しのぎ」や「なんちゃってテレワーク」ではなく、恒常的な形で可能なのだろうか。

経営者の役割
『経営者の役割』C.I.バーナード著、山本安次郎ら訳(ダイヤモンド社)

 実は5つの要件を満たしていなければ難しい、逆に言えば、5つの要件を満たしていれば可能だということを導き出せる古典的なテキストがある。その5つとは何か。

 キーワードだけでいうと、目的、貢献、伝達、非公式活動、道徳である。

 ちょっと気が利いた人ならこれだけで、あ、そういうことね、と得心がいくかもしれないので、以下は読む必要がない(読み進めて「答え合わせ」をしてもらってももちろんかまわない)。

 キーワードだけではさすがに不親切なので、今回は経営学の古典、「組織とは何か」を規定したバーナード『経営者の役割』をひもとき、今日のビジネスにひきつけて解説してみよう。なぜこの本を選んだのかといえば、組織とは何かについて整理できれば、コロナ後を生き延びるための組織改革のための有効なヒントとなるからである。

組織を成り立たせる3要素
「伝達」「貢献意欲」「共通目的」

 オフィスを持たない組織がどうやったら成り立つかを考えるには、まず、組織とは何かを規定する必要がある。

 バーナードによると、以下のように規定される。

組織とは意識的に調整された人間の活動や諸力の体系と定義される。そして(1)相互に意思を伝達できる人々がおり、(2)それらの人々は行為を貢献しようとする意欲を持って、(3)共通の目的の達成を目指すときに、成立する。したがって、組織の要素は、(1)伝達(コミュニケーション)、(2)貢献意欲、(3)共通目的である。これらの要素は組織成立にあたって必要にして十分な条件であり、かようなすべての組織に見られるものである。」

 字面は難しそうだが、誰かが、こういうことが必要なんですといって、それを一緒にやりたいと言ってくれる人を集めて、具体的に何かを行為するのが組織だと言っているのである。会社、学校はもちろん、サークル、マンションの管理組合などを思い浮かべれば納得がいくだろう。伝達(コミュニケーション)、貢献意欲、共通目的という「組織の3つの要素」は、80年以上にわたって受け継がれ、今も強く支持されている。

 この3つの要素を少し説明してみよう。