2014年12月にシリコンバレーで開催された「Onramp 2014 Challenge」。外部の技術者に自動車の走行データを解放してアプリケーション開発を競う、トヨタにとって画期的なイベントとなった
2014年12月にシリコンバレーで開催された「Onramp 2014 Challenge」。外部の技術者に自動車の走行データを解放してアプリケーション開発を競う、トヨタにとって画期的なイベントとなった Photo by Hiroshi Menjo

 スタートアップ企業を利用して事業イノベーションを成功させる鍵は、経営トップの本気度だが、それと同じくらい重要なのが「仕掛け人」の存在だ。

 なぜ仕掛け人が重要なのか。

 企業が外部の技術や事業を取り入れ、事業イノベーションを図るとき、担当部署を決めて組織的に対応することが多い。しかし、単に水と油を混ぜてもイノベーションへの化学反応は起きない。性質の違う事業同士が反応するには“触媒”が必要であり、それが仕掛け人だ。

 具体的に、シリコンバレーで活躍する仕掛け人を紹介しよう。

 自前主義の強かったホンダが2019年、シリコンバレーのスタートアップ企業であるドライブモードを買収するに至ったのは、ホンダの経営陣がシリコンバレーへの訪問を重ねるうちに、本来持っていたチャレンジ精神が呼び覚まされ、自前主義の伝統に打ち勝ったからだという。だがその裏には、その変化を辛抱強く導いた人物がいた。シリコンバレーにあるオープンイノベーション推進部隊、ホンダイノベーションズ・インクCEOの杉本直樹氏だ。

 杉本氏はリクルート出身で、同社のシリコンバレーの子会社にいたときに、縁があってホンダに転職した人物だ。ホンダに転職後、コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)を運営しながら、本社から訪れる経営幹部にシリコンバレーのベンチャーの文化に触れてもらうように心掛けたという。こうしてシリコンバレーと本社をつなぎ、ドライブモードの買収という、ホンダが新たなステップを踏む仕掛け人となったのである。