より付加価値の高い金属加工を手がけるべく、「トップ就任を機に五面加工機導入など大型設備投資を実践したところ、程なくリーマンショックが勃発し、売り上げ半減までに業績が落ち込むこととなりました」。しかし、多くの中小企業が廃業に追い込まれた未曾有の危機に際しても、「売り上げが減った分、いかに利益率を上げるか。目指していた付加価値の高い事業モデル構築にスピード感を持って取り組む転機となりました」と振り返る。
数々の逆風に見舞われても、ピンチをチャンスに変えてきた同社。その強みはどこにあるのか。
国家インフラ整備事業に
備えた第2工場を新設
●株式会社タイメック 事業内容/金属製品製造、人工大理石製品の開発・製造・販売、従業員数/71人、売上高/8.5億円(2020年度)、所在地/岐阜県関市武芸川町八幡7-1、電話/0575-46-1106、URL/timec-g.jp
一つ目が総合金属加工業へとシフトする中でも、継承してきた溶接をコア技術として確立し、さらなる進化に取り組んでいることだ。溶接技術は構造物などの品質、さらには人命にも関わる重要な要素であり、「その腕を磨くべく、年1回、社内で溶接技能検定を開催し、社外の溶接技能競技会にも参加しています」と棚橋氏。こうした蓄積を経て県代表として全国大会に出場する社員も登場。空港やホテルなど大型インフラ・建築案件が舞い込むのもその技術力ゆえだ。
二つ目が案件獲得や業務において独自の時間チャージ(時間当たりの付加価値)を意識していること。利益率向上につながる組み立てまで対応しているのもそのためで、「お客さまのコストや手間を省くべく、設計から保守まで“面”で対応できる会社を目指しています」と語る。
三つ目が若い社員の力を積極的に活用していること。同社社員の年齢比率は18〜35歳が60%超。「新たな事業分野や業種業界への進出も、他社との協業を進めるなど、常識にとらわれない若い社員の柔軟な発想があったからこそ」だという。
20年には新規事業である国家プロジェクトインフラ整備事業関連製品の中長期受注に備え、第2工場を設立するとともにロボット溶接機を導入。またもや設備投資に前後し、コロナ禍というピンチに見舞われることとなったが、「“ものづくりは人づくり”というモットーの下、人材育成の在り方を見つめ直す契機となりました」と棚橋氏。ロボット導入による省力化で働き方改革を進めるとともに、人間にしかできない高精度の溶接技術を研さん。人とロボットによるハイブリッド生産方式で新事業への進出も見込む。
まさにトライ&エラーで独自のポジションを確立してきた同社。今後の新たなチャレンジにも期待したい。
(「しんきん経営情報」2021年3月号掲載、協力/岐阜信用金庫)