復権の幻想#1
Photo:The Asahishimbun/gettyimages

接待スキャンダルが明るみに出るまでもなく、そもそも国に過剰な忖度をするNTT(日本電信電話)と総務省とは蜜月関係にある。そこに総務相経験者である菅義偉首相が誕生したことで、総務省が菅官邸に“恐怖”で支配される構図が従来以上に強まった。NTTと総務省が菅官邸には逆らえない「絶対服従」体制が完成したわけである。かねてNTTが悲願としてきた「NTTドコモの完全子会社化」と、菅案件である「携帯料金の値下げ」はこうした服従下で実行された。菅政権と、その意向を酌むNTTと総務省に「バーター取引」の意図はなかったのか。特集『NTT帝国 復権の幻想』(全5回)の#1では、事実関係と取材から真実をひもとく。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

ドコモ完全子会社化を
総務省の実力者が容認

「いいんじゃないですか。制約は何もない」

 高額接待問題で総務省を辞職した谷脇康彦・前総務審議官は、NTT(日本電信電話)の澤田純社長からNTTドコモの完全子会社化計画を聞いたとき、あっさりそれを容認したという。

 このやりとりの時期は不明だが、いずれにしても、総務省とNTTの歴史を振り返ると、谷脇氏の反応は、あまりにあっけなかった。

 NTTが移動体通信事業(現在のNTTドコモ)を分離したのは1992年。それ以降、政府は閣議決定や審議会答申を通じて「NTTによるドコモ出資比率の引き下げ」の方針を繰り返し示してきた歴史がある。ドコモの出資を100%に引き上げるのは、これとは全く反対の方向だが、NTTがドコモ完全子会社化の方針を発表した2020年9月29日の段階で、政府内部の根回しは済んでいたようだ。

 以降、総務省はもちろん、過去にNTTにドコモ出資の引き下げを強く求めた公正取引委員会まで容認の姿勢を示し、20年12月にNTTはドコモの完全子会社化を難なく完了した。あくまで総務省は、NTTによるドコモの完全子会社化は「企業の経営判断」との立場を貫いているが、もう一つの不透明な政策判断があったことが明らかになっている。