NTTグループは菅義偉政権に従順なようでいて、実際には対等以上に渡り合う“したたかさ”も持ち合わせている。携帯料金の値下げで譲歩しつつも、悲願だったNTTドコモの完全子会社化を政権に認めさせたのが、その典型だろう。特集『NTT帝国 復権の幻想』(全5回)の#2では、政府との駆け引きの中で果実をもぎ取るNTTの「政治力の源泉」に迫った。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
野党支持の組合員が自民党員に“宗旨替え”
NTTが政府・与野党議員を手玉に取れる秘密
NTTの歴史は、「組織を切り刻まれる歴史」だった。電話や通信事業のガリバーだったNTTは、公平な競争環境をつくろうとする政府から組織の「分割」を迫られ、それにあらがっても押し切られてきたのだ。
しかし、時代は変わった。
それを象徴する出来事が、NTTによるNTTドコモの完全子会社化だ。1992年に、政府・総務省によって移動通信部門を「分社」させられたことで発足したドコモの本体吸収がいとも簡単に認められたのだ。
それだけではない。政府からは、NTTグループが再結集し、米グーグルや米アマゾン・ドット・コム、中国のファーウェイなどに対抗する「日系テクノロジー企業」として復権することまで期待されているのだ。
政府が、NTTに “甘く”なったことに対して、競合するKDDIやソフトバンクからは懸念の声が上がっている(詳細は特集『デジタル貧国の覇者 NTT』の#14『ソフトバンク・KDDI社長が吠える!「大NTTが日本の通信を破壊する」』参照)。
安倍晋三政権や菅義偉政権を手玉に取り、組織統合という悲願を達成するに至ったNTTの「政治力」の秘密に迫る。