NTTグループと政治との蜜月は、今に始まったことではない。NTTを巡っては、1985年の民営化、99年の持ち株会社発足以降も再編分割論議が繰り返されてきた。そんなNTTがグループの再結集、すなわち「大NTT」の復権を遂げるためには、時の政権と旧郵政省の流れをくむ総務省との「折衝」は必要悪だったのだ。そして、デジタル貧国に成り下がった日本のICT(情報通信技術)レベルを底上げするという“お題目”において、NTT・菅官邸・総務省の3者の利害は一致していた。しかし、一連の接待スキャンダルはその「親密トライアングル」に痛恨の一撃を食らわせた。総務省幹部は失脚し、菅官邸は問題の火消しに躍起になっている。2018年の就任以来、改革の大なたを振るってきた澤田純NTT社長は、社内での求心力低下が危ぶまれる状況に陥っている。全5回でまとめた『NTT帝国 復権の幻想』では、復権に向けて猛チャージをかけていたNTT改革がつまずいた元凶を探る。
#1 4月5日(月)配信
ドコモ再編と携帯値下げ「バーター取引」の真相、NTT・菅官邸・総務省の一蓮托生
接待スキャンダルが明るみに出るまでもなく、そもそも国に過剰な忖度をするNTT(日本電信電話)と総務省とは蜜月関係にある。そこに総務相経験者である菅義偉首相が誕生したことで、総務省が菅官邸に“恐怖”で支配される構図が従来以上に強まった。NTTと総務省が菅官邸には逆らえない「絶対服従」体制が完成したわけである。かねてNTTが悲願としてきた「NTTドコモの子会社化」と、菅案件である「携帯料金の値下げ」はこうした服従下で実行された。菅政権と、その意向を酌むNTTと総務省に「バーター取引」の意図はなかったのか。事実関係と取材からひもとく。
#2 4月6日(火)配信
NTTの政治献金はKDDIの3倍!菅政権に面従腹背を演じられる「政治力の源泉」
NTTグループは菅義偉政権に従順なようでいて、実際には対等以上に渡り合う“したたかさ”も持ち合わせている。携帯料金の値下げで譲歩しつつも、悲願だったNTTドコモの完全子会社化を政権に認めさせたのが、その典型だろう。政府との駆け引きの中で果実をもぎ取るNTTの「政治力」の源泉に迫った。
#3 4月7日(水)配信
NTTが仕掛けた携帯値下げの茶番劇、最後に笑うのはドコモら「3キャリア」という大矛盾
菅首相が総務省に強く迫った「携帯電話料金の4割値下げ」。NTTは、当初こそNTTドコモを通じて大幅値下げを仕掛けて業界を驚愕させたものの、即座にKDDIとソフトバンクの競合2社が追随。再び3社寡占の競争環境が続き、新規参入した楽天や、格安スマホを展開するMVNO(仮想移動体通信事業者)が追い込まれる事態になった。結局、値下げで得をしたのは、消費者以上にNTTだったのではないだろうか。
#4 4月8日(木)配信
NTT接待不祥事で総務省「壮絶ポスト争い」勃発!旧郵政の一斉粛清で笑う旧自治省
東北新社に端を発した接待問題はNTTへ飛び火し、総務省は2001年に設置されて以来の大スキャンダルに見舞われている。そんな中で、ほくそ笑んでいるのが旧自治省官僚だ。通信行政を一手に掌握してきた谷脇康彦・前総務審議官ら旧郵政官僚が失脚することで、総務省上層部ポストが転がり込むかもしれない千載一遇のチャンスが訪れているからだ。壮絶なポスト争いのゴングが鳴った。
#5 4月14日(水)配信
NTT再編に競合21社が「待った!」、総務省とのドコモ子会社化密室論議の究明は必須
NTT(日本電信電話)が総務省を接待していた問題は収束の兆しが見えない。NTTと総務省の不透明な関係に疑惑の目が向けられる中で、KDDIやソフトバンクなど競合は、NTT再編そのものの阻止に向けて徹底抗戦の姿勢を強める。両者の対立を解消して妥協点を探る役割を果たしてきた総務省は、自らが「脛に傷」を持つ身で、混乱を収拾できずにいる。暗雲の立ち込めるNTT再編の行方を探る。
Key Visual by Noriyo Shinoda