リアルでも生かせる
「テレワーク力」が向上
先ほど触れた「業務の見える化による生産性アップ」のほかにも、テレワークがもたらす成果があります。テレワーク環境で働くことで、ビジネススキルの向上が見られているのです。私たちはこれを「テレワーク力」と呼んでいます。
2021年2月に実施した調査によると、派遣スタッフの上長(指揮命令者)の約6割が「テレワークを行うことによって、派遣スタッフのスキルが向上した」と回答しています。具体的には次のようなスキルです。
「役割遂行力」……求められる役割を理解し、判断軸を上司とすり合わせ、その役割を遂行する力
「判断する力」……業務の優先順位付けや自身が行うべき仕事を、自分で判断する力
「伝える力」……業務内容や進捗を周囲に共有し、わかるように伝える力
「受援力」……1人では解決できないときに、周囲に助けを求めることができる力
出典:リクルートスタッフィング「テレワークを行うことで身につくスキル『テレワーク力 』の実態調査」(21年2月)
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一方、派遣スタッフ側においても過半数が、同様のスキルがテレワークによって身についた、レベルアップしたと回答しています。これらは、コロナ禍収束後、オフィス勤務に戻ったとしても生きるスキルと言えるでしょう。
また、テレワークのメリットとして企業側から聞こえてくるのは、「人材調達がしやすくなった」という声です。リクルートスタッフィングにおいて、テレワーク可能な派遣求人数は、2020年4月に比べ、2021年3月には約34倍に増加しました。
そして、テレワーク可能な求人への応募率は、通常案件の約2倍。100%テレワークではなく、週1~2回であっても、テレワーク可能な求人に人気が集まっています。つまり、テレワークの導入は、人材獲得の有効な手段になっているのです。
私たちの調査では、派遣スタッフの約8割が、コロナ禍収束後も「テレワークを希望」と回答。企業側も8割以上が「テレワークを推進する意向」と回答しています。テレワークであれば、遠隔地での就業も可能です。実際、「立川市在住のスタッフが横浜の企業で就業」「名古屋在住のスタッフが大阪の企業で就業」といった就業エリアが広がっている事例も生まれています。
企業にとって、テレワークを「コロナ禍の一時しのぎ」ではなく、人材獲得や働き手の能力開発、エンゲージメント向上のために戦略的に活用・定着させていくことが、競争力アップにつながるのではないでしょうか。
(リクルートスタッフィング スマートワーク推進室 室長 平田朗子)