コロナに感染した非正規雇用者は
国保加入でも傷病手当金がもらえる

 次に「新型コロナウイルス感染症に伴う国民健康保険の傷病手当金」だ。傷病手当金は、病気やケガをして仕事を休んで、勤務先から給与をもらえなかったり、減額されたりした時に、健康保険からもらえる所得保障だ。

 会社員や公務員など被用者(企業や団体に雇用されて働く人)のための健康保険は、傷病手当金の給付が法律で約束されており、全国健康保険協会(協会けんぽ)、組合管掌健康保険(組合健保)、いずれでも給付を行っている。

 一方、国民健康保険の傷病手当金は、任意給付だ。給付を行っているのは、土木建築国保や医師国保など、業種ごとに構成されている一部の国民健康保険組合だけだ。自営業者や農業者、フリーランス、非正規雇用の労働者などが加入する都道府県単位の国民健康保険で、傷病手当金の給付を行っているところはない。

 だが、いまや国民健康保険の加入者(世帯主)は、パートやアルバイトなど非正規雇用の短時間労働者が、全体の3割を占めるまでになっている。

 令和元年度の「国民健康保険実態調査報告」(厚生労働省保険局)によると、国民健康保険加入者の職業別の割合は、農林水産業者2.3%、自営業者15.9%、被用者32.7%、その他の職業4.3%、無職44.8%。

 このうちの無職は、年金生活をしている高齢者がほとんどだ。勤労世帯に絞ると、大きな割合を占めているのが非正規雇用の被用者で、農林水産業者や自営業者を凌駕(りょうが)する存在になっている。これは、国民健康保険が、労働時間や収入などの要件によって被用者保険へ加入できない人の受け皿となっているからだ。

 勤務先の健康保険に加入できれば、療養中は傷病手当金がもらえるが、同じ被用者でも、国民健康保険に加入している人には傷病手当金の給付はない。病気やケガで仕事を休むと無収入になってしまい、それがきっかけで貧困に陥る可能性が高くなる。

 そのため、今回は、国が財政支援をすることで、特例的に国民健康保険からも傷病手当金が給付されることになったのだ。