光岡自動車の創業者が「仕事には失敗が必要」と断言する理由光岡自動車創業者・会長の光岡進氏 Photo by Hiroki Matsumoto

光岡自動車の創業者である光岡進会長は、ビジネスパーソンたちに失敗することの重要性を説く。「成功確率は50%なら挑戦する」「崖っぷちにこそ進むべき道がある」「プロが喜ぶような車は絶対にダメ」など、常識を覆す光岡流経営について、本人が語り尽くした。(聞き手・構成/ダイヤモンド編集部 松本裕樹)

失敗したことがない人は
挑戦したことがない人

 振り返ってみると、私は失敗ばかりしてきました。ホンダの本田宗一郎さんは「自分がやったことの99%は失敗だった」と言ったそうですが、私は独立時に電話線を引けない不動産を購入したことから始まり、本当に失敗の連続でした。

 しかし、これだけ失敗すると、ありがたいことに、とんでもない知識や経験が得られます。

 型式認定に挑戦し、自動車メーカーになることができたことも、マイクロカーでの失敗があったからこそだと思います。

 物理学者のアインシュタイン博士は「失敗したことがない人とは、挑戦したことがない人だ」と言っています。

 仕事をする中で過去に失敗がなかった人というのは、何の挑戦もしてこなかった人だと思います。失敗をすれば、いろいろなことがわかってくるのです。これは間違いありません。

 とはいえ、失敗するとわかっていることをやるのは挑戦ではなく無謀です。自分なりに考えに考えて、「いけるかもしれない」となったら、やってみればいいと思います。

 私の場合、成功確率が50%と思えたら挑戦します。といっても、その結果は先述の通り、失敗ばかりではあるのですが。

 ではなぜ50%の成功確率で挑戦するのかというと、当社が大手ではないからです。小さな工場で、多くの工程を手作業で行うため、当社の年間生産台数は500台程度。100万台規模で生産する大手メーカーと競うためには、当社ならではの戦い方をしなければなりません。つまり、大手では絶対に造らない商品で勝負する必要があるということです。