B課長を何とかなだめたC社長は、午後、Aを社長室に呼んだ。そして業務中の態度や身なりについて上司から注意を受けた場合はそれに従うこと、そして従わない場合は、試用期間満了後に解雇される可能性があることを説明した。しかしC社長の言葉にAは、

「えっ?そんなバカな!俺ちゃんと仕事は真面目にやってます。クビなんてありえないっしょ!」

 と真っ向から反発した。自慢の長い髪をかきあげ、気だるそうにしているAの態度にムカついたC社長は、

「B課長の言うとおりだ。こんな態度の悪いヤツの本採用はナシだ」

 と心の中で決めた。しかし、B課長の考えと違い、Aをクビにするつもりはなかったので

「Aには試用期間終了後、資材管理をやってもらおう。あの部署は人手不足だから受け入れてくれるだろう」

 と考えた。

正社員として採用した新卒社員を
試用期間後に契約社員として雇うことは可能か?

 しかし、一つ問題があった。それは資材管理課の雇用形態で、仕事が単純作業のため課長以外の従業員は全員が契約社員の扱いだったことだ。そして当然Aも契約社員として雇おうとした。

 次の日、C社長は再びAを呼んだ。

「Aさんは5月末で試用期間が終わります。その後についてですが、6月から契約社員として資材管理課で仕事をしてもらいます」

 Aは驚いた。

「契約社員って……正社員とは違うんですか?」
「当社の契約社員期間は1年で、更新は最高3回まで可能です」
「じゃあ、その後はどうなるんですか? もしかして、僕はクビ?」

 C社長は沈黙してしまった。Aは怒りに声を震わせた。

「信じられない!僕は営業がやりたくてこの会社に入ったんです。それにもともと正社員での採用だったはず。これじゃ話が違うじゃないですか!」