Aはその夜、オンライン上で複数のゲーム仲間にC社長から受けた仕打ちをぶちまけた。すると年上の仲間が、「それは会社の契約違反になるから、労働基準監督署で相談してみたら?」と勧めてくれた。そう聞いて元気になったAは、翌日C社長に向かって
「自分を契約社員にするのなら、労働基準監督署に訴えてやります!」
と宣言した。
Aの発言に困ったC社長は、D社労士に相談することにした。翌日、C社長はD社労士にAの件についての詳細を説明し、続けて尋ねた。
「B課長の話によると、Aは試用期間中だから、今私が話した内容の理由ならばクビにできるとのことですが、それは本当ですか?」
D社労士は、まず試用期間の意味と解雇の関係について説明した。
試用期間とは何か?
試用期間の労働契約はどうなっているのか
あくまでも企業側から見た場合、入社した社員の勤務態度や業務に対する適性などを判断し、本採用にするか否かを決めるための期間のこと。
<試用期間の労働契約について>
試用期間中の企業と労働者との労働契約は、解約権留保付労働契約に該当する。解約権留保付労働契約とは、当該労働者を本採用するか否か、自社の基準と照らし合わせて判断できるとし、不適格と認定された場合、当該労働者と締結している労働契約を解除できる契約である。そして使用者の解雇権が本採用後よりも広い範囲で認められるとされる。
<企業側が試用期間中もしくは終了後に社員を解雇したい主な理由>
○ 欠勤、遅刻、早退が多い
○ 健康状態が悪く、会社の勤務に耐えられない
○ 学歴や職歴の詐称が発覚した
○ 業務に対する能力が低い
○ 勤務態度が悪い
○ 協調性に欠ける
ただし解雇の取り扱いを行う場合は、就業規則等への明記が必要。
「このDさんの説明だと、A君の場合は解雇理由として「勤務態度が悪い」が当てはまるから、B課長の話は正しかったんですね」
「ちょっと待ってください」
D社労士はあわてて付け加えた。