◇前向きの不安

 不安をなくすことは不可能だ。しかし不安には、あなたを振り回す「後ろ向きの不安」と、あなたにエネルギーを与える「前向きの不安」がある。「1人はみじめ」と思う気持ちの中には、「競争から取り残されたくない」という焦りや、負け組になりたくないという気持ちがあるはずだ。

 問題は、何を勝ちとして、何を負けとするかだ。本当の孤独を経験すると、あなたは自分にとって勝つことと負けることとは何なのかを考えるようになる。

 野球選手なら、3打席に1回ヒットを打てば名選手だ。別の言い方をすれば、「100点を目指すのではなく、67点の人生を認めること」ということになる。

◇考えることと悩むことを区別する

 不安とトラブルは違う。トラブルには具体的な対応策がとれるが、不安に対する策はない。もし不安に押しつぶされそうになって眠れなくなり、死にたいと思うようなら、それは医療の対象だ。気軽に心療内科などに行ったほうがいい。

 また、「考えること」と「悩むこと」はまったく別物だ。具体的な問題をひとつひとつ調べたり解決しようとしたりするのが、「考えること」である。一方、ぼんやりした不安が頭のなかをグルグル渦巻いている状態が「悩むこと」だ。悩めば悩むだけ、不安は大きくなる。

 ふだん、交通事故にあうことや地震が起こることを心配して悩む人は少ないだろう。それと同じように、「悩んでもどうしようもないことは悩まない」と決めるのが一番いい。

◆「他人」と「他者」の違いを知る
◇苦しみの量を減らすため、直接ぶつかる

 不安を大きくするのは、あなたの想像力だ。信頼している人があなたの悪口を言っていたと人づてに聞いたら、あなたはその悪口を想像して不安で眠れなくなるだろう。面と向かって、洗いざらい話してくれたほうが楽だ。

 恋人や夫婦の喧嘩のときも、片方がずっと黙っていたり捨てゼリフのようなことしかいわなかったりしたら、それは中途半端な会話である。「後ろ向きの不安」があなたをむしばんでいく。一度文句を言い出したら、最低でも8時間は言い争いを続けるのだ。お互いが本気でもめているときは、だんだん話し合うようになる。そして、二人の関係に回復する可能性があるかどうかが、はっきりしていく。