一読のすすめ

 本書には、ハッとさせられる言葉がいくつも出てくる。そのひとつが「インターネットの最大の問題点とは、簡単になぐさめられること」という言葉だ。ネットで孤独を紛らわそうとするのは、単に痛み止めを打たれている状態に過ぎない。すぐに次の、もっと強いなぐさめを求めることになる。しかし、本当に必要なのは「孤独と不安」と共に生きると決意することだ。「孤独と不安」は、良い大学や良い会社に入るといった「世間」の求める方向に向かって努力することでごまかせるものではない。なぜならそうした共存が人生そのものだからだ、と著者はいう。

「生きる目的を知りたい」「不安とのつきあい方を知りたい」という方は、ぜひ本書を読んでみてほしい。心に響く言葉がいくつも見つかるだろう。

総合4.0点(革新性3.5点、明瞭性4.5点、応用性4.0点)

著者情報

 鴻上尚史(こうかみ しょうじ)

 1958年愛媛県生まれ。早稲田大学 法学部卒業。在学中に劇団「第三舞台」を結成、以降、作・演出を手掛ける。1987年「朝日のような夕日をつれて」で紀伊國屋演劇賞、1992年「天使は瞳を閉じて」でゴールデン・アロー賞、1994年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞、2009年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞を受賞する。日本劇作家協会会長。また、舞台公演のかたわら、 映画監督、ラジオパーソナリティ、小説家、エッセイスト、など幅広く活動中。NHK BSの「発掘! かっこいいニッポン」では、2006年の番組開始から司会者を務める。主な著書に『鴻上尚史のほがらか人生相談』(朝日新聞出版)、『親の期待に応えなくていい』(小学館)、『「空気」を読んでも従わない』(岩波ジュニア新書)、『コミュニケイションのレッスン』『幸福のヒント』(以上だいわ文庫)など多数。

(1冊10分で読める要約サービス flier