法の網をくぐる「アミューズメントカジノ」の登場

 例えば、10年ほど前までは「アミューズメントカジノ」と呼ばれる業態も存在した。「アミューズメントカジノ」とは、メダルで遊べるカジノゲームだ。

 表向きの扱いはゲームセンター。つまり、「ひと度現金をメダルにしたらメダルを現金には換えられない」という建前が存在する。にもかかわらず、「アミューズメントカジノ」と呼ばれる業態の中には、メダルを再度換金できる店も公然と営業していた。かつて、繁華街の入り口には、消費者金融やパチンコ屋の看板を掲げた中年男性のサンドウィッチマンが立っていたが、「アミューズメントカジノ」の看板を掲げた者も同じように客引きしていたという。

 今でも、「アミューズメントカジノ」を名乗る店は一部に残っており、「ギリギリ合法」の範囲でメダルを食事や酒に換えられる店もある。だが、かつてのように実際の金銭が動く業態の存在は許されなくなり、繁華街からは姿を消し、今日に至っている。

 しかし、規制が強化され、その対象となったものが表面上は見えなくなったからといって、存在そのものが社会から完全に抹消されたわけではない。「法の範囲」を示す補助線が明確に引かれると、同時に「法の範囲の外」も明確となる。「法の範囲の内」にあるものは表立って堂々と営業する一方で、「法の範囲の外」に位置されたものは、多くの人の目と権力の手が届かないところに居場所を見つけて生き長らえる。

 それは、「法の範囲の外」に出れば、「法の範囲の内」では決して味わえない射幸心やカネの巡りに出合えるからでしかないが、範囲を明確化することがかえって、「逸脱した存在」に新たな価値を生み出していることは確かだ。

 ルーレットやポーカーをはじめとする「カジノゲーム」の中でも、バカラはそこで動かされるカネが大きいことで知られる。しかし、そういった「大きな逸脱」ばかりが人を魅了しているわけではなく、むしろ「小さな逸脱」が人を魅了する事例もある。

「4号機」の規制が「闇スロット」に客を誘う

 その一つが「闇スロット」だ。経営関係者のYは語る。

「闇スロット」の「爆裂連チャン台」
(協力:FLASH編集部)

「スロット自体はパチンコ屋にあるよね。闇スロの機械もパチンコ屋でやるスロットと基本は同じ。でも、客が楽しめるように色々仕組まれているわけ。例えば、スロット台。『爆裂連チャン台』とか言われる『当たると短時間に、大量に出る台』っていうのがある。でも、『過剰に射幸心を煽っている』ということで規制対象になり、普通の店からは撤去されるんだ。闇スロにはそういう台を置いてる」

「パチスロメーカーっていうのは、客が集まる台をつくろうとして色々な工夫をしてるんだよね。アニメのキャラクターとかストーリーをコンセプトにした台をつくって、大掛かりなCMを打ったりもその一つ。ただ、そういう『見た目』だけじゃなくて、当たり方のパターンとかもいじっている。こうすれば人がハマるぞ、カネをつぎ込んで勝とうとするぞ、っていうプログラムをつくろうとして『意図的な連チャンシステム』が開発されるんだ。でも、パチンコ屋で、パチンコ以上にパチスロが流行ったりもして規制が及ぶ。そうすると、普通の店に置けなくなった台を中古で仕入れて『闇スロ』を開業する。客はもう普通の店では味わえない刺激と夢が体験できるわけ」

 パチスロ自体は70年代から存在したが、その人気が大きく高まったのは2000年代。人気台が次々に生まれ、パチンコ屋の中でも、それまでパチンコ台があったエリアにパチスロ台が置き換えられていった。

 しかし、2007年7月から規制が強化されたことと相まって、短時間で大当たりが出ることもあり、それまでのパチスロ人気を支えてきた「4号機」と呼ばれる台が撤去され、短時間では当たりの出ない「5号機」のみが店に置かれるようになっていった。「闇スロット」では、「4号機」やそれ以前の台を置いているのだ。

「4号機にハマった人間から言わせれば、5号機は当たらないし、面白くもない。最終的に勝つか負けるか以前に『遊べねーな』となる。闇スロで遊べるように工夫してあるのは、レート。闇スロはレートが普通の店の数倍に跳ね上がる。例えば、普通の店ならメダル1枚を20円で買うところが、40円~100円くらいになる。つまり、闇スロの店で1000円払ってゲームを始めようとすると、普通の店での2000円とか5000円分の勝負ができるわけ。もちろん、ゲームをしないでそのまま換金したりはできないよ。でも、少ない金額でより大きな勝負に出られるっていうのは客からしたらたまらない。ここ来たら普通の店には行けなくなるよ」