檜原村を木のおもちゃの村に
ついに村も全面的に協力

檜原村の随所に設置されている「山男のガチャ」檜原村の随所に設置されている「山男のガチャ」 Photo by H.K.

 そのまま、東京おもちゃ美術館の「おもちゃコンサルタント養成講座」に半年間通って、おもちゃ作りを学びました。その時に館長さんから、国産の木のおもちゃというのは、国内の木のおもちゃ全体のわずか5%しかないというお話を聞いて、それはおもしろい、チャンスがあるなと。おもちゃであれば大型の機材も必要ないので、新しく産業として始めるには初期投資も少なくて済みます。また、家具が盛んな地域としては、岐阜県の飛騨高山や北海道の旭川などがすでにありますが、木のおもちゃの村というのはまだない。そりゃそうですよね。自給率5%ですから。

 島部を除くと東京唯一の村である檜原村が、木のおもちゃの村というコンセプトでものづくりを始めたら、楽しいじゃないですか。ゆくゆくは、メイドイン東京の木のおもちゃとして、海外にも打って出られるかもしれません。

おもちゃづくりを開始している「おもちゃ工房」おもちゃづくりを開始している「おもちゃ工房」 Photo by H.K.

――ワクワクしますね。インバウンドが戻れば、海外からのお客さんも訪れたり購入してくれたりするかもしれません。

 そうなんです。でも我々は林業会社なので、加工含め、自社だけでそれを実現するのは難しい。そこで、さまざまな企業さんとコラボレーションして、何とかそれを実現しようと今、取り組んでいます。

 木の持っているストーリーや私たちの想いをしっかりと、提携先の企業さんにお伝えし、企業さんはそうしたストーリーをうまく活用し、一緒に檜原村の木の価値を高めていく。すると、相乗効果でどんどん、木の価値、森の価値が上がっていくんですね。

――この木はどこで生まれ、風雪に長年耐えて育ってきた、そんな木と一緒に毎日過ごしている。こういったことを考えられる商品はモノの価値だけではなく、購入した人の心も豊かになりますね。

 本当にそうですね。ストーリーを知ると、そのかたも周りに語れるようになります。すると聞いた人が、自分も買ってみようかなと、輪が広がっていきます。すると産地も潤っていきます。こうした循環が、檜原村のような山村地域のこれからの活路になっていくのではないかと、最近、感じています。

今秋オープンを予定している「檜原 森のおもちゃ美術館」今秋オープンを予定している「檜原 森のおもちゃ美術館」(建設中) Photo by H.K.

 生産者が加工や販売まで携わるようになると、買いに来ている人の喜んでいる顔が見えます。自分たちの仕事の結果を見ることができる。自分たちのやっていることの意味がガッと見えてくるんです。私たちはこうした「顔の見える林業」をめざしています。

 そこで、檜原村の村長に「ぜひ、檜原村を木のおもちゃの村にしませんか?」と提案し、協力してくださることになりました。まずは「ウッドスタート宣言」というプロジェクトを開始し、村で生まれたお子さんには、村でつくられた木のおもちゃをプレゼントします。

 さらに今秋には、村の中に体験型ミュージアムの「檜原 森のおもちゃ美術館」がオープンする予定です。年間数万人の親子連れに訪れてもらうのが目標です。その隣にはすでに「おもちゃ工房」があり、おもちゃづくりを開始しています。6月15日からREADYFORにてクラウドファンディングも開始しました(8月13日まで実施)。

――(パンフレットを見ながら)規模も工夫もすごいですね。ここで遊ぶ子どもたちの声が聞こえてくるようです。

 おもちゃ美術館や、村内での木のおもちゃ販売は、檜原村が木のおもちゃの村となるきっかけとなります。木を植える人、育てる人、切る人、加工する人、売る人、買う人。そのような流れに実績が出てくると、これから林業や木材産業、木工で生計を立てようという人たちが村に集まってきます。

 檜原村に遊びに来ると、山でも川でも遊べるし、木のおもちゃもある。そのイメージがあると、大人になった時にまた自分の子どもを連れてきてくれる。こうしたいい循環が10年、20年、30年と続くことで、少しずつ檜原村がおもちゃの村になっていくはずです。

――青木さんが思い描くような形でいろいろな人が集まってくると、多様性も生まれ、そこからさらに予想もしてない、おもしろいアイデアや企業とのコラボも生まれそうです。現在のメンバーも多様でおもしろい集団ですね。多様性があるといろいろな化学反応が起こりやすくなります。そのためには情報発信も大切です。Webサイトなどの情報発信にも力を入れているのも、そのあたりが関係しているのでしょうか?