選ぶ基準は「場所」から「人」へ
フィットネス業界の変革に

 コロナ禍では、視聴者が求めるフィットネス系動画の内容、方向性についても変化があったという。 

 「やはり“痩せる系”の動画はニーズが高くなりましたね。外出自粛で気にされている方が多いのかもしれません。もうひとつ面白いのは、昨年後半あたりから、長期にわたり習慣的に行うことを目的としたストレッチ動画がよく見られるようになりました」

 コロナ禍を振り返ると、時期ごとで動画のニーズは少しずつ変化してきたという。昨春、最初の緊急事態宣言が出された頃は「2週間で○○になるためのエクササイズ」といった、明確な期間とゴールを設けて行うフィットネス動画が好まれたようだ。オガトレさんなら「開脚できるようになるストレッチ!【2週間で開脚ベターっになる方法】」がそれだ。

 この動画は、再生回数1300万回を超えた。公開は2019年11月だが、コロナ禍に入ったあたりから再生回数が伸びたという。
 
 「対して今は、期間やゴールを決めた動画よりも、毎日継続的に行うストレッチや、朝晩の習慣化に適したストレッチ動画に需要が移っている印象です。あくまで僕のチャンネルにおいてではありますが」

 昨春は、緊急事態宣言を「今だけの我慢」と意識していたのかもしれない。一方、今はもはや緊急事態宣言や外出自粛が日常的になりつつある。そんな意識の違いも、動画ニーズの変化に関係しているのかもしれない。

 「最近は、長尺でゆっくり行う運動も好まれるようになりましたね。以前は『2分で効く』といった、短時間でできる運動が主流でしたが、今はむしろ数分間にわたって体を動かす動画がよく見られるように。一時的ではなく、真剣かつ長期的な運動を望んでいるのだと思います」

 これまで、長尺でじっくりと体を動かすメニューは、ジムのトレーナーや書籍などで情報を得るのが主流だったという。動画でこういった内容を発信するコンテンツは少なかったが、それをメジャーにしたのもYouTubeだとオガトレさんは分析する。

 「さらに、今まではジムという“場所”にひも付いていたフィットネスが、トレーナーという“人”にひも付くようになりましたよね。よい立地のジムより、自分の信頼できるYouTuberやトレーナーに付いていく。ジムでもオンライン動画を配信し始めており、場所よりトレーナーに付く傾向は強まっていると感じます」

 もちろん、ジムに行けば設備や機材といった環境的メリットがあるが、人気YouTuberは、道具がなくても家で効果的なトレーニングを行える方法を紹介している。だからこそ、選択基準が場所から人へと変わりつつあるのだろう。フィットネス業界全体に大きな変化が起きている。