埼玉vs千葉 勃発!ビジネス大戦#1Photo:imagenavi/gettyimages、PIXTA

コロナ禍の「脱・東京集中」の流れを受け、企業誘致で熱戦が繰り広げられている。かつての企業誘致は、自治体主導のケースが中心だった。しかしビジネスチャンスとみた、埼玉りそな銀行や三井不動産といった大企業が陰でアクセルを踏み込んでいる。特集『埼玉vs千葉 勃発!ビジネス大戦』(全10回)の#1では、埼玉と千葉で繰り広げられている企業誘致の熱戦模様をお届けする。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

※本特集は当初「全7回」構成でしたが、7/23(金)~25(日)配信の記事3本を加えて「全10回」構成に変わりました

「翔んで埼玉」で話題の所沢に
KADOKAWAが本社機能の一部を移転

「だったら一緒に来るか、所沢へ」

 2019年に大ヒットした映画「翔んで埼玉」の名シーンだ。東京都内では埼玉県人が迫害される世界で、都知事の息子・百美が、隠れ埼玉県人の麗に“禁断の恋”をした。「あなたについていきたい」と願う百美に、麗は冒頭の言葉を投げ掛ける。しかし、都内で育った百美に「所沢」は受け入れられず、言葉を失ってしまう――。

 映画では都民に“忌避”された埼玉の地。そんな埼玉県所沢市に20年11月、出版大手のKADOKAWAが本社機能の一部を移した。

 実は今、埼玉県とそのライバルの千葉県で、企業誘致合戦が熱を帯びている。帝国データバンクの本社移転の転出入調査によれば、20年の転入超過数は埼玉県が70件で全国1位だ。千葉県は66件で2位と激しく競り合う。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、東京の一極集中が見直されたことが企業誘致盛り上がりの一因だ。埼玉や千葉ならば都内では困難な広さの敷地面積も確保できるため、「東京からの本社や拠点の流出が続くのでは」とみる関係者は多い。

 KADOKAWAが本社機能を移転したのは、商業施設なども併設された「ところざわサクラタウン」の中だ。所沢市の旧所沢浄化センター跡地の再開発計画にKADOKAWAが名乗りを上げ、14年に土地の所有権を取得した。

 サクラタウンでKADOKAWAは本社機能に加えて書籍製造も手掛ける。リアルタイムで得たデータを基に自社製造を行うことで、書店から出版社に送り返される書籍や雑誌の返品率を下げることが狙いだ。「デジタルパブリッシングの拠点施設だ」とKADOKAWAのサクラタウン担当者は意気込む。

 サクラタウンには「りそなグループセルフプラザ」という埼玉りそな銀行の出先機関が設置されている。そして埼玉りそなこそが、KADOKAWAをはじめとする埼玉への企業誘致で“黒子”として汗を流す存在なのだ。