中華麺の老舗フランチャイズが幕を閉じた本当の理由

 変われなかった中小企業は潰れた時、周囲から「最低賃金を引き上げたせいだ!」とか「コロナ禍のあおりをモロに受けた!」なんていろいろなことを言われる。しかし、原因をしっかりと分析してみると、単なる「自然淘汰」だった、ということがよくある。

 それを象徴するような企業倒産がつい最近あった。

 中華麺の製造販売を主体に、ラーメン店「元祖札幌や」のフランチャイズ展開も行っていた南京軒食品(東京都品川区)だ。創業1914年。従業員は57人、埼玉に工場を持つこの中小企業は、個人経営のラーメン店を多く取引先として麺を卸していたという。そんな南京軒食品が4月21日、東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。

 これを受けてメディアは『コロナで相次ぐ「ラーメン店」倒産。老舗フランチャイズが100年の歴史に幕』(日刊工業新聞7月31日)という感じで報じ、いかにもコロナが悪いと匂わせているが、実は南京軒食品は17年2月期から19年2月期まで3期連続で減収、当期損益も3期連続で赤字となっていた。

 残念ながら、コロナ禍の前から既にビジネスモデルが破綻していたのだ。

 なぜこうなってしまったのかというと「時代による淘汰」も大きい。「全国製麺協同組合連合会の活動」(平成24年度)を見ると、生めん類の生産量の推移は、平成7年の約72万トンをピークに下降して、平成23年には約54万トンまで落ち込んでおり、「市場が伸び悩むなかでの競争激化による淘汰が進行している」とはっきりと書かれている。そして、その淘汰の中でも減少傾向にあるのは中小工場。そう、南京軒食品がそれにあたる。

 これに拍車をかけたのが、「自家製麺ブーム」だ。ラーメン好きの方ならばおわかりだろうが、最近の個人経営のラーメン店は店内に製麺機を置き、自家製麺を使用しているところが多い。かつてはラーメン屋はスープで勝負していたが、この10年ほどで「自家製麺」に力を入れるようにもなった。この取引先側の大きな意識変化が、中小の製麺製造販売店の経営に打撃にならないわけがないのだ。

 一見すると、南京軒食品の100年の歴史に幕を下ろしたのは「コロナ」のように映る。しかし、実際は10年前から指摘されていた「競争激化による淘汰」と「自家製麺ブーム」という時代の変化に対して「業態転換」で対応できなかったということが大きいのだ。

 それはつまり、「最低賃金も払えない」「業態転換もできない」という中小企業は残念ながら、南京軒食品と同じ道をたどってしまうということだ。

 だからこそ、生き残るために「業態転換」にチャレンジをしていただきたいのだ。

 もしそれでもなお業態を換えたくない、かといって時給930円も払えないという経営者の方は不本意かもしれないが、潔く会社をたたんでいただいた方がいいかもしれない。