「完全に迷わなくなったかというとそんなことはなく、今でも道に迷うことはあります。でも、回数は減ったし、迷っても慌てなくなりましたね。それは、たとえ道が分からなくなっても、リカバリーする手段が分かったから。『迷っても大丈夫だから、あえて知らない道を通ってみよう』と思えるようになったんです。とはいえ、冒険できるのは自宅の近くだけなんですが(笑)」

 近所といっても、意外と歩いたことのない道は多い。初めて見る風景は新しい発見が多く、仕事にもプラスに働いているという。

「目的なくただ歩いているときに、ふとアイデアが浮かんだり、『あの原稿はもっとこうしたら面白いかも』と思えたりするんです。普段とは違うルートは気分も変わって、リフレッシュもできます」

 コロナ禍の今、家にこもりがちの日々が続いている人も多いだろう。近所にある普段通らない道、入ったことのない路地裏へ足を延ばしてみると、凝り固まった頭と体に刺激を与えられる可能性もあるのだ。

「コツ」さえつかめば
道に迷いにくくなる

 書籍の刊行にあわせて行ったTwitterでの発売記念キャンペーンでは、読者から方向音痴エピソードや、道に迷わないコツを募集。そのなかには、「方向音痴は直らない」という意見も寄せられたそうだ。だが吉玉さんは「工夫でなんとかなることもある」と話す。

「方向感覚って0か100かだと思っていましたが、そうではありませんでした。運動が苦手な人でも練習を積めば前よりはできるようになるとか、ファッションセンスのない人でもファッション誌を読んで勉強すれば前よりすてきなコーディネートが組めるようになるのと、同じことだと思うんです。方向感覚も、訓練すればちょっとはマシになります。だから『どうせ直らない』と諦めないでほしいと思います」