ただ米国も1973年にベトナムから完全撤退した後、10年間は武力行使に慎重だった。

 次に戦争をしたのは1983年カリブ海の島国、グレナダの侵攻だった。人口10万人、面積は東京都の16%の小国に左派の「人民革命政府」が生まれ、飛行場を建設していたことが「米国の安全保障をおびやかす」という被害妄想的な論が侵攻の口実になり、米国は空母や6000人の兵力を投入、1週間で制圧した。

 大人が幼児を相手にするような戦いだったが米国人は「大勝利」に熱狂し、レーガン大統領の支持率は一気に高まった。ベトナムに負けて以来の屈辱感が久々に晴れた、ともいわれる。

 今回の失敗から米国は何を学ぶのか。米国の覇権が崩れることはないにしても、米国世論が中国との軍事的対決に慎重になれば、アフガン20年戦争の教訓は生きる。

 日本にとっても米中の衝突に巻き込まれて、最大の中国市場を失って経済に致命的打撃を受け、安全保障も危うくなる事態を避けられるかしれない。

(軍事ジャーナリスト 田岡俊次)