中国がもくろむ、「アフガン混乱」を慎重かつ巧みに利用する3つの戦略Photo:NurPhoto/Getty Images

米軍撤退で混迷するアフガン情勢
注目される中ロの動向

 アフガニスタン情勢が混迷している。

 イスラム主義組織タリバンが首都カブールを占拠し、実権を掌握した。ガニ大統領は国外逃亡し、アフガン政権は崩壊した。現在に至っても、カブールの空港、およびその周辺では、国外脱出を試みる市民でごった返している。

 今年4月以来、バイデン米大統領がアフガンから完全撤退を表明し、「20年戦争」を終結させようとした経緯がタリバン復権の引き金になったのは言うまでもない。同大統領は「米軍撤退の決断は正しかった」と自らの判断を正当化しているが、日本や英国を含めた同盟国を含め、米国の行動は国際社会で物議を醸している。例えば、2001年にアフガニスタンに対する米国の軍事作戦に加わることを決断したブレア英元首相は、今回の米軍撤退について、戦略に基づいたものではなく政治による決断だとして、バイデン大統領を批判している。

 今後、タリバンは各地勢力を束ねながらアフガンの地を統治していくのだろうが、その過程で気になるのはやはり中国とロシアの動向である。背景として、ここでは3点、注目すべきポイントを指摘したい。

 一つ目は、米軍撤退の決断は、バイデン政権がより多くの財源や労力を、自らが戦略的競争相手と定義する中ロ両国との攻防に割こうとしていること。二つ目は、イスラム過激派やテロリズム対策といった観点からアフガンと良好な関係を築きたい中ロは、政権がタリバンに移っても、同国を戦略的に支援していくであろうこと。最後に、米軍撤退後という新常態は、中ロが対アフガン政策で「前のめり」になる条件を創出していることである。

 米中ロという3大国が、アフガン情勢をめぐってどのような動きをしていくのか。地政学情勢やマーケットの動向にも深く影響するのは必至であり、注視していく必要がある。今回は、現段階において、中国共産党指導部が混迷するアフガン情勢をどう認識し、どう行動しようとしているか、その背後でどのような戦略や思惑を有しているのかを考えてみたい。