彼らは、まずファンド運営会社を設置し、次にファンドを組成する。その際、ファンドに資金を提供する投資家に内部収益率(一般的には20~30%)を確約してファンドへの投資を勧誘する。

 次に、ファンドが企業を買収し、一定期間株式を保有(実際は5年程度の保有が多い)する間に、リストラなどのコストカットや資産売却等を行い、買収した企業を第三者に転売する。ちなみに、内部収益率を25%とすると、最初にファンドに出資した100円が、5年後には244円になる(実際は、「レバレッジをかける」といい、投資家からの資金の他にファンドも金融機関から借り入れを行って買収し全体のリターン率を下げるようにするが、投資家が出した資金が、約2.5倍になって戻ることは変わらない)。

 そして、アクティビスト・ファンドと呼ばれる物言う株主は、M&Aに関連する投資ファンドの中で株主提案などを積極的に行うファンドのことだ。

 彼らは狙いをつけた企業の一定数以上の株式を保有し、投資先企業の経営者に対し、例えば、低収益事業の売却、高収益事業の合併や買収(M&A)、経営資源の集中、コスト削減、手元資金の活用、アクティビスト・ファンドと意見の異なる役員の退任、アクティビスト・ファンドと考えを同じくする者の役員選任といった株主還元策、事業売却、経営陣刷新などの経営戦略などを要求する。その目的は、株主となった企業に対し要求を突き付けながら、内部収益率以上のリターンを実現することだ。

 元通産官僚の村上世彰氏で知られた、通称「村上ファンド」が、阪神電鉄や東京放送、ニッポン放送株などを買い占めたことを覚えている方も多いだろう。今回の事件で、名前が出てくるエフィッシモ・キャピタル・マネジメントは、この村上ファンドに在籍した者が設立したシンガポールにあるアクティビスト・ファンドである。

物言う株主が選任を要求した
東芝の役員候補者とは

 東芝は昨年6月22日に「第181期定時株主総会の開催及び株主提案に対する当社取締役会意見に関するお知らせ」を開示した。

 筆者が注目したのは、同報告書21~22ページの記載である。

 そこには、アクティビスト・ファンドから東芝に対する提案として「当社(東芝)における最も重大な問題点は、コングロマリット・ディスカウントが生じている点にありますが、コングロマリット・ディスカウントが生じる主な原因として、資本コスト以下の低ROICの投資が活発に行われ、株主価値が毀損されるのではないかという、株式市場の懸念があります。当社による上場子会社3社の完全子会社化は、コングロマリット・ディスカウントの解消と相反する施策であり、当社の施策を株式市場が評価していないことは、当社の株価が継続的に低迷していることからも明らかです」という記載がある。

 ここにアクティビスト・ファンドの本音が書かれている。