6月25日、東芝の株主総会が行われ、取締役会議長を含む2人の取締役選任議案が否決される異例の事態に陥った。近年の東芝は「底なしに悪い会社」だ。本稿では、この東芝を巡る一連の不祥事から、一般市民及びビジネスパーソンにとって役に立つ「教訓」を七つ、いささかの皮肉と共に抽出したい。(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)
「底なしに悪い会社」東芝
錯乱経営の末路
東芝の株主総会が6月25日に行われて、会社側が提出した取締役選任議案が2人分、否決された。
この議案は、昨年の株主総会が公正に行われなかったという第三者委員会による調査結果を受けて、提出直前に取締役候補2人の選任を撤回するという異例のプロセスで提出されたものだった。そして、取締役会議長の永山治氏(中外製薬名誉会長)を留任させるものであったため、株主の賛成を得られるかどうかが注目されていた。永山氏には、昨年の株主総会の運営について「不当な圧力が東芝により加えられたことを疑わせる証拠は認められなかった」とする東芝監査委員会の調査報告を了承したことや、指名委員会委員長としての責任があると目されたからだ。
近年の東芝は、一言で言って「悪い」。それも、常軌を逸する悪さだ。
ごく大まかに経緯を振り返る。表立ったケチのつきはじめは、総額6000億円超で買収した米国の原子力発電所メーカー、ウェスチングハウスを通じて生じた米国原発事業の多額損失だった。広い事業分野の中から、将来の事業の柱として半導体と原発を選んだ経営的な「選択と集中」(東芝のスローガンでは「集中と選択」)の意志決定が盛大に裏目に出た。