経営陣や株主ではなく
東芝従業員が迎えている「本当の危機」
この記事は、東芝の全従業員に読んでいただきたいと思っています。
東芝の従業員が、2015年の不正会計発覚以来の危機を迎えています。「東芝が」ではなく、「東芝の従業員が」危機を迎えているとしている点に注意してお読みください。少なくとも経営陣や株主から見れば、東芝は危機を迎えているわけではありません。
4月14日、東芝の車谷暢昭社長兼CEOが辞任しました。報道によれば、車谷前社長は株主との関係が悪化していたことに加え、イギリスの投資ファンドからの買収提案に関連して経営陣との対立が起きていたとされています。前日段階で「14日の臨時取締役会で社長の進退問題を協議する」と報道されていましたが、結局本人が辞任を申し出たようです。
さて、当事者からは批判されることを覚悟のうえで、事の成り行きを事実に沿って違う文脈に書き替え、整理してみます。
三井住友銀行の元副頭取で、イギリスの投資ファンド・CVCキャピタル・パートナーズの日本法人の前会長だった車谷前社長は、中外製薬出身の永山取締役会議長をはじめ12人中11人が社外出身者で構成される取締役会と、CVCからの買収提案に関連して対立し、外堀を埋められた結果、解任動議が出る前に辞任しました。
車谷前社長は、旧村上ファンド出身者らが運営するシンガポールのファンドとも対立していたことで知られています。2020年の「モノいうファンド」からの株主提案では、ファンドからの取締役選任案については退けることができましたが、その株主総会での車谷氏の取締役再任議案の賛成も57%台にとどまっていました。
一連の報道を確認していただくとわかる通り、今回の騒動の渦中に純粋な東芝出身者は綱川智新社長以外、1人も登場しません。
これが最先端の大企業のガバナンスというものなのですが、こうした状況を見ると、さすがに私のような部外者としても、違和感を覚えずにいられません。「会社はいったい誰のものなのか?」と思ってしまいます。