スーツ 消滅と混沌#7

縮小が続くスーツ市場で活気があるのはオーダースーツ市場だ。2度の経営危機を乗り越えた老舗のオーダースーツ専門店、オーダースーツSADAの佐田展隆社長は、自社製のスーツを身にまとい、革靴、ビジネスバッグ姿で富士山や剣岳、白馬岳などを踏破する。特集『スーツ 消滅と混沌』(全8回)の#7では、スーツ姿の登山に隠れた佐田社長の狙いを聞いた。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)

「本当に欲しいスーツ」を
ヒアリングすることこそ“採寸”

――御社は「オーダースーツSADA」と社名に「オーダー」が入っています。オーダーメードには3種類ありますが、御社はどれに分類されますか。

 私たちは、“マシーンメイドのフルオーダースーツ”と言っています。手縫いはしませんが、フルオーダー(一から型紙を起こす)ですので、採寸してオリジナルの型紙を起こします。最近はオーダーメードの中でも「パターンオーダー」(既製サンプルからサイズ調整する)が多い。着心地は既製スーツなんです。「オーダーメードしたのに太ももの裏が余っている」という話は割と多いですね。

――オーダーメードでも体に合わないものがあるのですか?

 採寸した数値を「ヌード寸」といいますが、これだけでスーツは作れない。本人の好みだけでなく、どんな印象に見せたいか、どんなライフスタイルかは人によって違いますよね。政治家とホストが同じヌード寸だったとしても、全く違うスーツを要求されます。政治家が丈が短くて細身のスーツを求めませんよね。

 また、「ゆとり」をどこに取るかで、どんなスーツになるかが決まりますし、上がり肩・下がり肩や猫背、O脚などに対して、どんな体形補正の入ったスーツをその人が求めているのかもヒアリングします。職業に合わせた丈の調整もします。それで、ゆとりの部分を考慮した「上がり寸」(仕上がり寸法)を決める。どんなものを欲しがっているのか、ヒアリングでひもといていくというのが、真の採寸です。

――標準体形の人なら既製スーツでもいいのですか。

 さまざまな体形、ライフスタイルの人がいます。「標準体形の人」なんていないんです。

――既製のスーツ専門店では、「機能性スーツ」も並び始めています。

 相手への礼を尽くすための、世界共通のドレスコードがビジネススーツ。世界の首脳に会いに行っても失礼のないドレスコードなわけです。スーツをカジュアル化するくらいなら、もうスーツなど着なくていい。変化球に走るのはやめようと思っています。