スーツ 消滅と混沌#4Photo:PIXTA

コロナ禍でスーツ専門4社は軒並み業績が大幅に悪化した。ただし、“スーツ離れ”は今に始まったことではない。特集『スーツ 消滅と混沌』(全8回)の#4では、スーツを巡る業界の変遷とともに、日本独自のスーツ文化の終焉と今後の見通しを分析する。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)

スーツ購入額は20年前の7割減!
消滅が進むスーツ市場

 年間たったの2893円――。

 新型コロナウイルスの感染拡大で加速した“スーツ離れ”。その象徴はこの数字だろう。ちょっと豪華なディナーを食べれば簡単に超えてしまうこの金額こそが、総務省の家計調査で明らかになった2020年の1世帯当たりのスーツ(背広)の購入金額である。

 19年の4716円と比べても約4割減。2000年の1万0118円からは約7割減と、スーツ市場の“消滅”は業界を揺るがしている。

 国内のスーツ市場のピークは1990年代のバブル期だ。当時は百貨店とスーツ専門店の売上高だけを合わせても、約1.4兆円の市場規模があった。これが直近では8000億円を割ってしまった。19年の日本の衣料消費市場が9兆6750億円(繊研新聞社推計)だったことを踏まえれば、スーツ市場は決して小さな規模ではない。

 とはいえ、なぜスーツ市場はここまで縮小してしまったのか。