新型コロナウイルス感染拡大の影響で、阿鼻叫喚(あびきょうかん)のアパレル業界。その中でも異彩を放つのが西松屋チェーンだ。8月に3代目の若社長にバトンタッチ。今期の見通しは3期連続減益から一転して増益予想に転じ、26期連続増収も視野に入れる逆転劇だ。大村浩一社長は西松屋をどう改善し、どこに導くのか。直撃した。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)
予算管理ができておらず
値下げロスが利益を圧迫していた
――2020年8月、父の大村禎史社長が会長となり、専務から社長に昇格しました。新型コロナウイルス感染拡大の収束の見通しが立たず、3期連続減益という状況下での社長交代です。
会長から(社長就任の)打診があったのは6月です。19年1月に社長補佐室長となって経営の中枢に入り、20年1月に専務になったので、いずれ自分が社長に指名されるということは予想していました。
経営に携わるようになって私が取り組んだのは、社内の改革。一つは在庫管理です。
20年2月期決算は25期連続増収を実現したけれど減益。原因を調べると、季節性の衣料品の値下げロスが増加していました。突き詰めれば、過剰仕入れによる在庫の増加です。売り上げのピーク時なのに、センターに在庫が残っていることもありました。
――西松屋は店舗からの発注はなく、センターで仕入れを一元管理しているはずです。なぜそんなことが起きるのですか。
商品部の仕入れが過剰でした。長年、予算の数字は仕入れ額から売り上げと利益を積み上げて算出していました。売り上げを伸ばすために多く仕入れることになり、その結果在庫が増えて、値下げロスが生まれるという悪循環です。仕入れ過剰をコントロールしようとしても、予算が決まった時点で既に仕入れが始まっている状態でした。
そこで値下げロスをなくすため、まずは予算をつくるところから始めました。「仕入れを増やして売り上げを取るのではなく、値下げロスを減らして売り上げを取ろう」と全員に伝えました。それが21年2月期の秋冬物からなので、今期はその成果が出てきます。
また21年2月期の上期から、商品の在庫管理を担当者ベースではなく、トップまで確認できるような仕組みをつくりました。これが上期でも功を奏して、下期も順調に進んでいます。
――仕入れのし過ぎが値下げロスを生むという悪循環に、多くのアパレル企業が悩んできました。業界ではよくある話で、値下げを減らし売り上げを増やしたくとも、その管理は非常に難しい。御社はどんなシステムを導入したのですか。