「深く考えている」が何を意味するかを理解したければ、その逆を想像するといい。すなわち浅く、ロジカルでない思考の例を思い浮かべるのだ。たとえば売上アップの策を出さなければいけないとき、「キャンペーンをやってはどうか」のような抽象的な案で終わるのであれば、それは浅い考えだ。抽象的な内容は、誰も批判しようがない。逆に具体的な策の場合、それに対する質問や疑問に答える必要が生じてくる。ロジカルであるためには、自信を持って具体的に言い切らなければならない。

 また「広く考えている」も、その逆の「狭い思考」を考えたほうがわかりやすい。出荷した製品に不良品が相次いだとしよう。多くの場合、その原因となる製造工程を見直そうとするだろうが、選択肢はそれだけではない。「検品を強化する」とか、「他社に製造を委託する」という方法もありうる。「本当にそれだけ?」「他にもっとあるんじゃない?」というツッコミがありうる、いわゆる「抜け漏れ」がある思考は、ロジカルではない。

 ここからは「つながっている」「深く考えている」「広く考えている」の反対、すなわち「残念な考え」を取り上げながら、ロジカルな思考についてさらに掘り下げていく。

◆「つながっていない」思考とは
◇「ロジカル矢印」はどっちを向いているか?

 原因と結果の関係を正しく理解することは、ロジカル思考の第一歩だ。

 やってしまいがちなのが、原因と結果を取り違えるというミスである。「気温が高いとビールが売れる」のように、「A→B」(AならばB)が成り立つとき、AとBには「因果関係」があるという。ビジネスの世界でよくあるのは、この矢印を逆にとらえてしまうことだ。

 まさか、と思うかもしれない。しかし「社員のモチベーションが高い会社は業績が良い」という主張を検証してみよう。この主張は一見正しそうに見えるが、本当は「業績が良いと給与や福利厚生が良くなるため、社員のモチベーションも高くなる」という因果関係になっているかもしれない。

 さらに「A→B」が成り立つとき、「A→C」や「A→D」となる可能性も考える必要がある。たしかに品数が多ければ、売上は上がるだろう。しかし同時に、在庫管理やカタログ作成にかかるコストについても考慮しなければならなくなる。

◇「パンを食べると犯罪者になる」はどこが間違っている?

 良い事、悪い事が起きたとき、原因を考えることはとても大切だ。しかし原因だと思っていたことが誤っていると、いくら対策を頑張っても見当違いになってしまう。