たいていの物事の裏側では、いくつもの原因が複雑に絡み合ったり重なったりしている。しかし私たちは、そうした原因を単純化して考えがちだ。そればかりか、「これが原因であってほしい」と、都合の良い論理を組み立てることも多い。もっともらしいことや目立つことに飛びついて、すぐに「これが原因です」と決めつけないように気をつける必要がある。

 また、いくつもある原因のうち、弱い原因をひとつだけ取り上げてしまうことも避けるべきだ。「アンケートでは良い評価だった、だから売れるはず」という主張も、アンケートのつくり方しだいでは、それほど信頼が置けるものにはならない。それは構造上、「犯罪者のほとんどはパンを食べたことがある、だからパンを食べると犯罪者になる」という主張とほとんど変わらないからである。

◇目的に対して適切な行動をとる

 ロジカルになるための基本は、「目的に対して適切な行動をとる」ことだ。当たり前だと思うかもしれないが、できていないことも多い。特によくやりがちなのが、「働き方改革をするので残業禁止だ」のように、目的と行動を取り違えてしまうことだ。

 また、目的を達成するための行動を適切に設定できたとしても、継続するのはなかなか難しい。人間は長期的に良いことより、目の前の良いことを優先してしまう。3年後の理想を達成するために行動したければ、そこから逆算して1年後や半年後の目標を決め、それらを達成するために「今は○○する」というふうに、具体的な行動に結びつけなければならない。

◆「深く考えていない」とはどういうことか
◇ロジカルに伝える3つのポイント

 ロジカルに伝えるうえで大事なのは、言葉の解釈の幅がなく、誰もが同じ意味でとらえられることだ。「とても」「かなり」といった表現、流行のカタカナ語などが含まれた文章は、言葉が抽象的になり、正確に伝わらない恐れがある。

 抽象的な言葉を脱して、深くロジカルに考えるためには、「数字を使う」「カタカナ語に頼りすぎない」「中学生でもわかる言葉を使う」の、3つのポイントを意識するべきである。

 仕事の指針を立てるときも同じだ。「頑張る」「誠意を込める」「気をつける」といった指針は、行動ではなく意識の問題にすぎない。実際に行動に移すために必要なのは、「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように」の5W1Hである。正しい原因を突き止め、意識ではなく具体的な行動として規定しないと、問題への対策にならないし、スタッフ間で共有することもできない。