星野リゾート、ファミリーマートに見る
「需要増」を実現するための方法

 コロナ禍の観光業の中でも経営が絶好調なのが星野リゾートです。いろいろな面でコロナ禍の経営とはかくあるべしということが学べる事例なのですが、今回の文脈でいえば星野リゾートの星野佳路社長が昨年のコロナ禍で提唱した「マイクロツーリズムの開拓」はウィズコロナの状況下での新規需要掘り起こしの良い具体例になります。

 要するに需要としてはインバウンドが消滅し、県をまたぐ移動にも制限が唱えられるようになった。だったら県内の旅行需要を掘り起こすのがいい。これがマイクロツーリズムの考え方です。

 そもそも星野リゾートの主要ターゲット層は富裕層です。富裕層はコロナ禍で逆に、例年の海外旅行という楽しみがなくなってしまいました。家計の予算はあっても使えなくなってしまった状況です。だったら、神奈川県民だったら箱根に、静岡県民だったら熱海に来てもらってぜいたくでゆったりとした時間を過ごしてもらうのはよいことです。

 この考え方ですと東京都民や大阪府民にはうまく適用できない話かもしれませんが、それ以外の45道府県については県内を見回してみればそれなりにぜいたくな時間を過ごせる観光地が存在しているものです。まあ、つっこみどころとして東京都民の富裕層はプライベートジェットで八丈島や小笠原を目指したらどうかという話はありますが、3密を避けるためにはそれはちょっと無理筋でしょう。

 話を戻します。飲食業でいえば今回のウィズコロナの需要増として明らかに重要だったのがテークアウト部門の充実です。しかし昨年のコロナ禍で緊急にテークアウトを開始したままという会社よりも、結果を分析してどんどん中身を入れ替えていっている会社の方が生き残る確率は高くなります。

 最近のニュースですと、コンビニ各社が昨年は取りやめていたおでんを今年の秋は再開する様子です。その中で今回の文脈に関係する試みとして、ファミリーマートのおでんうどんの試みは面白いと思います。

 要するに「おでんつゆで割ったうどん」というのが新しい基軸メニューとなって、そこに顧客がどんどんトッピングを加えていくという新メニューです。おもしろい点は、トッピングは卵やちくわといったおでん種だけでなく、レジ横に置いてある鶏のから揚げやコロッケからも選べる点です。

 つまり、従来あるおでんにうどんという一品を加えただけで、ファミリーマートが丸亀製麺の競合相手として名乗りを上げられるようになったという点がこの事例の面白いところなのです。

 このファミマの試みが成功するか失敗するかはまだわかりません。しかしこの事例には、ウィズコロナ経営の重要なポイントが見え隠れしています。それはウィズコロナで新規需要を獲得するためには、小さな実験をたくさん試せるようなやり方がいいということです。