武田薬品 製薬エリートの真実#1Photo:Bloomberg/gettyimages, Diamond

約10年前から、組織大変革がやまぬ武田薬品工業。生え抜き社員が次々と去る一方、キャリア採用を強化している。大変革の先のバラ色の未来に懐疑論がくすぶるも、人材を引き付けるのには待遇の妙があった。特集『武田薬品 製薬エリートの真実』(全8回)の#1では、武田薬品と業界他社の待遇を比較、分析した。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

製薬大手5社年収1000万円超
武田薬品は高待遇かつシビア

 国内製薬トップの武田薬品工業は外国人経営陣の下、終身雇用を柱とする日本型雇用システムからの脱却を掲げている。結果、雇用の流動化が著しい。

 今秋も2年連続となるリストラを検討している。他にも退職加算金が出る恒常的な制度を利用して次々と社員が辞めている。すっかり変貌した企業カルチャーと巨額企業買収による大借金を不安視し、武田薬品を嫌厭する声が社内外にある。

 その一方で、経営幹部も一般社員もキャリア採用で続々と人材が入ってきている。既に愛社精神は乏しくなっても、退職にはあと一歩踏み出せない生え抜き社員も少なくない。

 人材を引き付ける要因の一つに、業界トップクラスの待遇があるのは間違いない。

 武田薬品、アステラス製薬、第一三共、中外製薬、エーザイ。有価証券報告書によると、これら国内大手製薬5社の社員の平均年収は「1000万円超」と、ほぼ同じになっている。互いに優秀な人材を取り合う競合関係にあり、常に社員の待遇バランスを調整しているためだ。

 ただし、これはあくまでも平均年収。細部を見れば、武田薬品の好待遇は歴然としている。

 クリストフ・ウェバー社長兼CEO(最高経営責任者)の報酬18億7400万円(21年3月期)を筆頭に、上位職になればなるほど他社との格差は広がっているようだ。

 それは武田薬品社内においてもシビアな格差があるということを意味する。

 製薬大手の人事、出世、年収をよりリアルに比較してみよう。