武田薬品工業の旧湘南研究所発ベンチャーのGenAhead Bio(ジェナヘッドバイオ)。2020 年ノーベル化学賞受賞で話題になったゲノム編集技術「クリスパー・キャス 9」を非独占的ライセンス契約の下で取り扱い、社員のほとんどは非タケダOBOG。最短で2年後の IPO(新規株式公開)を目指す。特集『武田薬品 製薬エリートの真実』(全8回)の最終回では、元武田薬品研究員である周郷司社長を直撃した。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
古巣タケダと今も同じ屋根の下だが
仕事の便宜もこちらからの優遇もない
――武田薬品工業における創薬基盤技術の研究経験を生かし、2018年2月に社内のベンチャー企業設立支援プログラム(EVP)を利用して起業しました。ビジネスモデルは?
ゲノム編集技術と遺伝子デリバリー技術を用いて、製薬会社などの創薬支援をしています。自社でも核酸医薬品の研究開発をしています。つまり創薬支援と創薬のハイブリッド型ベンチャーで、今は前者がビジネスのメインです。
――古巣の武田薬品には今も一部資本参加してもらっています。他にも支援はありますか。
経営サポートでアドバイスを受けることはたくさんありますが、金銭的な意味ではないですね。仕事の便宜を図ってもらっているわけでもない。もちろん近くにいますし(ダイヤモンド編集部注:武田薬品の国内研究所が入居する神奈川・湘南ヘルスイノベーションパークに入居)、お互いに知っている人もいるので、当社に発注する際の安心感はあると思います。
ただ、こちらも古巣だからといって値段など何も優遇はしていません。関係会社を優遇しないというのはIPO(新規株式公開)に際して必要なことなんです。
元タケダだからというのは、初めてビジネスする相手にとって入り口としてはいいかもしれませんが表面的なもの。顧客と会って話すことこそが大事で、科学的な面で議論すると、先方に「これは大丈夫だな」と安心感が生まれます。
――17~18年に武田薬品から次々とベンチャーが設立された際、武田薬品は元社員に転籍後5年間の報酬水準維持を約束しました(詳細は本特集#6『武田薬品の研究所大リストラで生まれたベンチャーに迫る「給与保障が終わる日」』参照)。そのセーフティーネットは間もなく切れ始めます。武田薬品出身の社員に動揺は?