昨年の自民党竹下派のセミナーに登壇する竹下派会長の竹下亘（右）。竹下は9月17日夜、自宅で静かに息を引き取った。物言わぬ竹下と対面したのは、「参院のドン」青木幹雄ら限られた関係者だけだった Photo:JIJI
自民党総裁選が告示された9月17日夜、党内第3派閥、竹下派会長の竹下亘が都内の自宅で静かに息を引き取った。74歳だった。
兄で元首相の竹下登が田中角栄に反旗を翻して旧田中派内に「創政会」を結成するのに合わせ、NHKを退職して登の秘書となった亘は、兄の「天下取り」の過程をつぶさに見聞きしてきた。それだけに竹下派復活に懸ける思いは誰よりも強かった。「怒りは敵」が口癖で、「我慢の哲学」を貫いた兄同様、決して激することなく最後まで静かな闘志を燃やし続けた。
亘の家族は首相の菅義偉や竹下派会長代行で外相の茂木敏充らの弔問を断った。物言わぬ亘と対面したのは、登の秘書から「参院のドン」となった青木幹雄ら限られた関係者だけだった。
その亘は死を前に、総裁選では前政調会長の岸田文雄を支持することを自民党島根県連幹部に伝えていた。元首相の小渕恵三の次女で亘と思いを共有してきた元経産相の小渕優子も地元の「上毛新聞」の取材に岸田支持を明言した。
もっとも、竹下派全体としては誰を支持するかについては今も集約されていない。岸田をはじめ行革相の河野太郎、前総務相の高市早苗、幹事長代行の野田聖子という4人の候補者全員に対し、推薦人を送り込むという“全方位作戦”を選択した。総裁選後に実施される衆院選に関しては、「竹下派」で戦うことを亘が存命中に確認しているが、その後の派閥運営を巡っては手付かずのままだ。
第3派閥がどちらに向かうかによって、党全体を巻き込む大きな派閥再編に発展する可能性は否定できない。
