両手をズボンのポケットに突っ込んだまま外務省アジア大洋州局長の金井正彰(左)と話をする中国外務省アジア局長の劉勁松(中央) Photo:AFP=JIJI
首相の高市早苗の台湾有事を巡る国会答弁に端を発した日中対立は長期化が避けられなくなった。11月7日の高市発言後、初の首脳会談が行われるチャンスだった南アフリカのヨハネスブルクで開催されたG20首脳会議での中国首相、李強との会談はおろか接触すら不発に終わったからだ。現地からのニュース映像を見る限り、互いに歩み寄る機会があったように見えたが、李のよそよそしい態度から中国側の強い抗議の意思が伝わってきた。
しかし、それでも高市側からアプローチする手はあったのではないか。思い出されるのが2018年、韓国・平昌冬季五輪で見せた当時の首相、安倍晋三の行動だ。開会式前のレセプションで安倍は北朝鮮代表団の席につかつかと歩み寄り、最高人民会議常任委員長の金永南に話し掛けたのだった。
「拉致問題を解決し、全ての被害者の帰国を求める」
この接触によって拉致問題が動いたわけではなかったが、国際社会に拉致問題解決に向ける日本政府の強い姿勢をアピールした意味はあった。その点でG20での高市は中国ペースの情報戦に巻き込まれた印象を与えた。
高市発言後、訪中した外務省アジア大洋州局長の金井正彰と会談した中国外務省アジア局長の劉勁松は、テレビカメラの前で金井を見下すように両手をズボンのポケットに突っ込んだまま話を続けた。元駐日大使で中国外相の王毅も高市を強く非難した。「(高市発言は)レッドラインを越えた」







