「ノーコード」「ローコード」ツールは
非エンジニアの強力な武器

 私自身の失敗談を紹介しましょう。自社でやっている事業を進めるにあたり、ソフトウェアを内製した方がいいのではないかと考えて、エンジニアと相談していたことがありました。仕様についてあれこれ打ち合わせをしていたそのとき、もう1人のスタッフに「私はそれ、ツールの『Notion(ノーション)』でやろうと思っていました」と言われたのです。

 Notionというのはクラウド型のワークスペースで、メモやタスク、Wiki、データベースなどを統合したサービスです。ブログのような操作性でテキストや画像を使って情報の整理ができ、社内で情報共有ができるツールなのですが、かなり高機能で、裏側にはきちんとしたデータベースが存在しています。また、ある程度のアクセス管理もでき、外部へ見せたい情報は公開サイトとして外へ表示することもできます。

「Notionでやれますよね」と言われて「確かに」と思ったのですが、一方でエンジニア出身の私のそのときの気持ちを正直に言うと、どこかで「打ち合わせもして、いろいろなアイデアをエンジニアが出してくれて、これはこれでつくったら楽しそうだな」と思っている自分もいました。

 そう、基本的にソフトウェア開発や、モノをつくるのって楽しいのです。そこで、ついつい「Notionでは、あれはできないのでは」「これをやるならどうせつくることになるのだから、最初からつくってしまえばいい」という言葉が喉元まで出かかりました。

 しかしこれは「つくることがゴールになっている」典型例です。我に返って「では、まずはNotionで行きましょう。その上で、できない点が明らかになった時点でつくることを考えれば十分ですね」と話して、モノづくりの方はいったん凍結することにしました。

 人間は、つくる楽しさを知っているとモノをつくりたくなってしまうもの。でも、それを我慢してでも、価値の提供を追求する方が大切です。でき上がりの結果だけの「アウトプット」ではなく、その効果や成果である「アウトカム」をしっかりつくり出していくことを、もっと意識すべきだと思います。

 その際、とてつもなく大きな武器となるのが、Notionなど最近のノーコード、ローコードで動くツールです。こういうノーコード、ローコードのツールは「あれができない」「これができない」とエンジニアにはバカにされがちです。しかし最近のこうしたツールは、意外と機能が高く、思った以上のことができてしまうものです。

 また、新規事業・サービスにおいては、最初は完全でなくてもいいので迅速に、コストをかけずに立ち上げるということがより重要な場合が多いです。今あるツールをバカにせず、有効に活用していくことは非常に大切なことです。