価値を提供し続けるプロダクトづくりを
可能にするサブスクモデル
もうひとつだけ、モノより価値を重視すべきという例として、パッケージとサブスクリプションモデルについて取り上げたいと思います。
SaaSとパッケージ製品、あるいはサブスクリプションモデルと一括購入モデルを比較したときの違いについて、考えてみましょう。モノを一括で購入するということは、そのモノの価値がまだ分かっていない購入者が、その価値の不確かさによるリスクをすべて引き受けているということ。販売者から見れば、購入者にそのリスクを押しつけているというかたちになります。ところがそれが、SaaS、サブスクリプション型で提供されているときには、そのリスクは販売者と購入者の双方が分担するかたちになります。
「これは自分が使いたいものではなかった」というときに契約を終了できるということは、購入者、利用する側から見ればリスクが低減されます。一方、売る側から見れば、今までのモデルでは正直「売ったもん勝ち」で、その後使われなくなっても別に構わない。むしろ本音を言えば、使われればメンテナンスやサポートが必要になる可能性が出てくるので、使われない方がいいぐらいだったわけです。
しかしサブスクリプションサービスでは、そういう状態は許されません。売る側には確かにリスクが生まれますが、そのリスクはユーザーとも分かち合うものとなります。また、逆に言えば、このリスクが本当に良いものを提供し続けなければならないという、いい意味でのプレッシャーになり、常に改善して価値を提供し続けるプロダクトづくりが可能になります。
ユーザーが求めるものは日々刻々と変わります。変化するユーザーのニーズに的確に対応し続けていくためには、ある一時点で商品を引き渡したら終わり、という状態ではなく、使い続けてもらうことで初めて収益が成り立つという縛りを入れた方がいい。その方が、事業者側の継続努力が促されるという効果もあるのです。
(クライス&カンパニー顧問/Tably代表 及川卓也、構成/ムコハタワカコ)